はじめまして。estieでデータサイエンティストをやっている馬場と申します。いくつかのスタートアップを経て2022年7月に入社しました。
これから自己紹介をしつつ何故estieに入ったのか、どういうことをやっていくのかをご紹介したいと思っています。お付き合いいただければ幸いです。
今までのキャリア
博士まで行って経済学をやっていました。学位は取ってないけど。専門はミクロ経済学で産業組織論とかマーケットデザインといった分野を扱っていました。
元々はマーケットデザイン(有名な例だとGoogle Adwordsのオークションの設計)みたいなことをやりたかったのですが、「データ分析もできますよ」と言ったことがきっかけとなり本業になっていました。
今までのキャリアではスタートアップをうろうろしており、データ分析系はMLOps的なこと、アナリスト的なことも含めてなんでもやっていました。
今までいたドメインの経緯を記載してみると、
インターネットオークション→アパレル→ダイナミックプライシング(ホテル)→ 教育
です。
法則を見ると、”経済学→その他→経済学→・・・”と繰り返して今は経済学フェーズになっています。
プロダクト的な内容に絞ると以下のことをしていました。
インターネットオークション | 落札価格の予測や、出品カテゴリのレコメンデーション、商品の名寄せなど |
アパレル | 服の好き嫌いデータを元に新着商品のレコメンデーション(実際は画像解析以外の部分を担当。商品の説明文の解析や画像部分の研究結果のサービスへの組み込みなど) |
ダイナミックプライシング(ホテル) | 売上を改善する宿泊価格の算出・提案、需要予測、サービス導入効果の測定など |
教育 | 学習状況に応じた学習すべき内容の提案、学習データのマイニングや可視化など |
強いて共通点を挙げると、何かしらのレコメンデーションをやってきたと言えるかもしれないです。
それぞれ気にしないといけないことは異なっており、比較するのも面白いですがそれはまたの機会に。
何故estieに入社したのか
選考プロセスで確認したかったこと
過去にいた会社を振り返ってみると、ドメインへの興味だけで会社を選択した場合のパフォーマンス(多少のずれは学習で吸収できますが、あまりにズレが大きいと影響が出始める)やモチベーションにおいて厳しいと感じることが多かったです。
そこで何が得意かつ興味あるのかを振り返りつつ、自分に合っている環境なのかを考えながら選考を受けました。
- 自分の力を発揮できるところなのか。
八方美人的にあれができるこれができるではなく、「どういうことが自分の売りで会社の事業のどういうところにささりそうなのか」を面接でも繰り返し聞きました。(多少業務内容を限定したものの、いざ転職活動をしてみると結構需要があった。)
- 企画から携われる開発スタイルか。
個人的な好みですが、分業が進みすぎていると辛かったこともあり、どうやってその課題を解決するか企画からやりたいと思っていました。
- フルリモートよりはある程度出社したい。でもあまり制約がないところがいい。
自分があまりオンラインだけのコミュニケーションが得意でない一方で、通勤時間を考えたり一人で集中したりしたい時はリモートの方がよいケースもあり、リモートでも出社でも良い勤務形態が望ましいなと思っていました。前者は緊急事態宣言真っ只中で転職した際に、コミュニケーションにかなり苦労したので、入社後すぐのフルリモートは避けたかったです。
- ミスマッチがないか。
私の職種でプレワークをやるのは初めてだったらしいのですが、実際に業務で使うデータの一部を触らせてもらえて非常に面白かったです。(突貫で作ったのでとても綺麗とは言えないですが)コードも社員に見てもらい、意図の説明や質疑応答などもあり不安が払拭できました。
実は以前いた会社でもプレワークをやっていたのですが(そこでは私は出す側)、共通点や違いなどがあって興味深かったです。
共通点は一定時間内にデータを使って示唆を出すことが課題で、どういうところを評価するのかなどでした。一方で、違いは私は分析課題の候補をいくつか提示していたのですが、estieではそういうのが全くなく課題の発見能力のようなものまで含めて見ていたところでした。
今回の転職でいくつかプレワークを受けたのですが、技術を見るところや課題設定から自分でやるケースもありました。恐らく求めているスキルが違うことからきているのだと思いますが、その辺りも相性を見る上では良い観点なのかもな、という気づきがあって面白かったです。
1社しか受けない場合はともかく複数受ける場合は、かなり短期間での負担が大きくなるのでその点は課題ですが、基本的にプレワークは選考過程としておすすめです。
不動産データが面白そう。
選考プロセスのプレワークのところでも書きましたが、不動産データは触っていて面白く(以前ホテルや駐車場のデータを触っていたので多少知見を持っていたこともあり)昔から興味はあった分野でした。
このビルの賃料は一体どういう理屈(商業用不動産ではないですが、家賃や土地の値段が広さや駅にどれくらい近いのか、近くに学校や店などがあって便利なのかなどで変わってくるのをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。)でこの値段になっているのかが見えてきたり、テナントにどの産業の企業が入っているかで、その業態によってどういう立地が商売するには良いのか、といった傾向が掴めたりします。賃料と言った曖昧なデータを紐解くできる点が非常に興味深いと考えています。
しかし、不動産テックで扱うデータは公開情報を収集していることが多いイメージであまり惹かれなかった点や、色んな意味で業界的に怖い(一部は正直不動産などで取り上げられたりしますね。)などの理由からこれまで縁がありませんでした。
estieと出会ったことで、商業用不動産市場がどういう市場なのか(住宅市場との違い、東京が世界有数のマーケットであること、リモートワークが増えることで市場がどうなるのかなど)を理解することができ、実際にestieのデータを見られたことなどから働くイメージが湧きやすかったです。
将来的にはデータを元に、街の開発にも良い影響を与えられるようなサービスにできたら嬉しいなと思っています。この辺りは経済学系のバックグラウンドを持つ人は基本不動産が好きなのでは?と考えております。
ヘドニックアプローチという手法で賃料を推定するのは、計量経済学の教科書では定番の例としてよく出てきますので、データサイエンティストとしても非常にやりがいがあると感じております。
estieで今やっていること
estieで現在取り組んでいることは以下の3つになります。
- データサイエンスチームの再編成
- 検索基盤の作成
- 新規事業チームでのレコメンデーション開発
データサイエンスチームは今までestie proで提供しているe賃料(推定成約賃料)を扱ってきました。しかしestieではマルチプロダクトでサービス提供していることもあり、プロダクト共通の課題が出てきたり他のプロダクトからデータサイエンスに関するニーズなどが増えてきました。私が入社してメンバーも増えたことから、「全社横断のデータ分析課題を解決する体制へ変更し、データサイエンスに力を入れていこう」という方針転換があり、目下その体制への再編を行っております。
解決する課題は、全社横断的なものもあれば、特定のサービスに紐づいたものもあります。
私は現在それぞれ一つずつ受け持っており、一つが検索システムの基盤作り、もう一つが新規事業のコアとなる不動産レコメンドシステムです。
検索基盤の作成を詳細に説明すると、「ビルや貸手を検索するときにデータベースに問い合わせているものを検索エンジンに置き換えてしまおう」といったプロジェクトです。
ここでは、
- 検索速度の向上
- 予測変換精度の改善
- 表記揺れの吸収
- 検索精度の向上(「京都」と検索したときに「東”京都”」が引っかからないようにするといった、不動産ならよくある課題の改善です)
などを目指しています。
最初は一つのサービスに実装されることになりますが、この機能が今後estieで提供する予定の様々なサービスにも適用されていくようになります。
一方のレコメンデーションでは、貸主と借主のニーズや状況を元により良いマッチングのサポートができるシステム作りをしています。こちらの詳細は現在開発中ですので、またの機会に書けるといいなと思っています。
もちろんこういったことはデータサイエンティストだけがいれば出来上がるものではありません。
プロダクトマネージャーと議論したり、インフラエンジニアに基盤作りを手伝ってもらったり、ソフトウェアエンジニアと、どう結果の受け渡しをするか擦り合わせるなど様々なメンバーと協力する必要があります。データサイエンティスト間でも、携わっているプロジェクトでの共通点やオーバーラップがないかを情報交換したり、共通の課題に取り組んだり、レビューをしたりと協力することがたくさんあります。
一見共通しているニーズでも、ユーザーが貸主なのか仲介なのかでペインや必要となってくる要件が微妙に違います。
例えば、貸主は自身が保有している区画をできるだけ早く埋めたいのに対し、仲介にとっては貸主関係なく何件(or売上)成約できるかなどの積み上げを重視してることが多いです。
上記のニーズのように、データサイエンティストやソフトウェアエンジニアだけで話していても見えてこないことはたくさんあります。
職種問わず同じチーム一丸となって同じ目標に向かって一緒にやっているというのを実感できるポイントであり、働く上で重要な要素かと感じております。
estieで今後やりたいこと
マッチング/プライシング/オークションなどを使い、貸手と借手がより良い取引をできるようにしたいです。
少し抽象的にいうと、情報の非対称性を緩和することで社会の総余剰を増やしよりよい社会にしていきたいと考えています。
estieはマルチプロダクトを扱っていることもあり、不動産取引における全てをやれるポテンシャルがあります。もちろん、特定の技術を使うこと自体が目的となってはいけないのですが、確実にニーズがあると感じております。上記でも書きましたが、以前扱っていたホテルとは色々共有点があるので、今まで培ってきたノウハウをestieに還元していきたいです。
最終的には街づくりにまで影響を持てるようなサービスにできたら嬉しいなという野望があります。
おわりに
文中でも書きましたが、estieはデータを使って面白いことが色々できる会社です。市場規模も大きく、優秀なメンバーと一緒に働けるので、
- 不動産データに興味がある
- データを活用して新しいもの(技術、ビジネス両面を意識して)を作っていく
ことが少しでも刺さったならまずは下のリンクから話からでも聞いていただけると嬉しいです。