estieが作りたい未来について

はじめまして!estie(エスティ)の束原です。

弊社は先月、借入による16億円の資金調達を行い、その資金を「Whole Product構想」の早期実現に活用させて頂く旨発表しました。 ちょうど私個人もestieに入社して3年が経過したというタイミングが重なったため、このブログでは改めてestieがこの構想を通じて何を成したいのかを書こうと思います。

コンテンツ

  • 我々は何をやろうとしているのか(Whole product構想とは何か)
  • estieはもはや不動産テックではない

この記事を書くに至った問題意識

「estieがやろうとしていることの面白さが世の中に1割くらいしか伝わっていないんですけど」

創業以来、ブランディングが下手くそなスタートアップとして名を馳せてきた弊社ですが、お陰様で今でこそ徐々に認知が取れてきています。 他方で、現在も採用候補者の方には「そもそも業界的に関心が持てない」と言われることもしばしば。最近入社して頂いた方にも、選考の過程で「なるほど、そんなことがやりたかったんですね。もっと発信頑張った方がいいですよ」と言われてしまう始末。

不動産業界に馴染みのない方からすると、estieについておおよそ以下のような印象を持つようです。

  • オフィスにフォーカスしているため解きたい課題に共感しづらい。そもそもオフィスって今後どうなっていくのよ?
  • シンプルに「オフィス版SUUMO」が作りたいのかな?
  • そもそも不動産業界ってなんだかとっつきづらい

上記のようなイメージをお持ちの方、2分だけ頂いて是非このブログをご一読頂けると嬉しいです。

我々が向き合っている愛すべき業界

estieは商業用不動産(Commercial Real Estate)という一般的にはあまり聞き慣れない領域でビジネスをやっています。 これは、オフィスや物流施設、商業施設あるいはホテルといった、「スペースを第三者に貸し出すことにより収益を得ることを目的として作られる不動産」を総称した市場です。その中で当社は特にオフィスの領域から事業をスタートしました。

この商業用不動産市場の魅力を少しだけ語ると、まずなんと言ってもバカでかい。都市別で見ると東京は約85兆円の市場を持ち、2位のニューヨークを上回る世界最大の市場規模を誇ります。

上記にランクされている都市一つ一つとの比較で想像してみると、確かにそんな気もしてきます。

東京には渋谷があり新宿があり、六本木があって池袋もある。日本橋もあって丸の内もあるのに品川もあるし、最近は虎ノ門も熱い。個人的には私は東京のハレとケが混在しているところが好きで、よく友人に「東京って他の国の大都市と比較して色んな表情を持ってて最高だよね」と話すのですが、文脈の補足が足りないせいか結構白い目で見られます。

※ちなみに日本は国別で見ても、アメリカ、中国に次ぐ3位の市場規模を持っています。

我々が実現したいこと

突然抽象的なことを言いますが、不動産ビジネスは「未来を予測し、その予測により未来を創るビジネス」だと思います。

不動産投資・開発は息が長く、一度始めたらスタートアップのように途中でピボットすることはできません。この世界で最も巨大で、一つ一つ機能や特徴が異なるハードウェアを同時多発的に作っている、そんな業界です。未来を予測する重要性がとても高い領域と言えるでしょう。

そして、未来を予測、あるいは創り出すのに一番必要なのは「ビジョン」です。

森ビルの創業者である森稔氏が六本木という土地に未来を見出して都市開発を行なったことや、そのビジョンに共感して融資を推進した銀行の担当者がいたこと。例えば企業の社長がオフィスの移転を検討するのも、腕利きシェフがどこかに自分のお店を構えるのも、全て”最初その人にしか見えてなかったビジョン”が出発点になっているはずです。

そしてそのビジョンを実現するためには「一歩踏み出すための根拠や勇気を与えてくれるデータ」が重要だと私は考えているのですが、この領域にはそのデータインフラが存在していないという大きなギャップが存在します。

結果として、一歩踏み出す勇気を得るのに多くの時間を要するか、または材料が整わずに諦めてしまうこともしばしばです。

私は、大小様々、このような機会がこの国で毎日のように発生しているのではないかと思っています。森ビルが17年かかる六本木ヒルズの開発に着手し、そのビジョンを全うできたのは、彼らが非上場企業であったことにも起因しているはずです。

この課題に対して、我々は賃貸や売買にまつわる需給のデータ。そしてそれらに付随する、とてもExcelでは整備しきれないデータを整えることで、あらゆる領域の「高度なマッチング(取引の活性化)」を可能にしようとしています。この領域、最後は生身の人間が現物を見ること、その経験を積み重ね、直感を磨くことが重要な世界であることは間違いなく、正直デジタルの世界で取引が完結するとは一切思っていません。他方で、それらを下支えする基盤を作ることが我々の使命です。

estieは最初に「オフィス × 賃貸」の領域でビジネスを開始し、「estie pro」というサービスを作りましたが、あくまでそれは上記を実現するための一歩目です。上記の未来図を我々はWhole Product構想と呼んでいます。

Purposeを実現するために、戦略として落とし込んだ「Whole Product構想」

上述の通り、estie proは、弊社が構想する未来の最初の一手でしかありません。(estie proを一言で言うとオフィスに特化したSPEEDAやBloombergのようなサービスです。オフィス賃貸に必要な情報が、これを活用すれば即座に得られ、正しい意思決定が可能になる。というイメージでしょうか)

引き続き順調に成長しているestie proですが、今後estieは、それに加えて今まで独自に収集・構築してきたデータやソフトウェアを土台とし、いわゆる「コンパウンドスタートアップ」としてお客様のバリューチェーンに沿った多種多様な機能を開発し、次々と提供していきます。

実際我々は、現在4つの新規プロダクト立ち上げを同時に走らせるという、このフェーズのスタートアップでは正気とは思えないプレイをしています。

コンパウンドスタートアップの面白いところは、それぞれが独立したプロダクトとして完結するのではなく、最終的にそれらが全て一体の価値として文字通り「複利」で効果を示すことです。サービスAに隣接するサービスBを作ることで、社会への提供価値は2倍どころか10倍、100倍にもなり得ます。

不動産という資産はアセット間の関連性が強く、例えばショッピングモールの賃料増減データは、そこにモノやヒトを運ぶための物流施設・交通網のニーズと非常に深く関わっています。どのような施設・設備をどの比率でどこに配置するのか、全ては需要の予測と創出を目指した途方もなく高度なマッチングです。他方で、これまで見えていなかったものが一つ見えるようになることで、連続的に他のものが見えるようになってくる(顧客への提供価値=プロダクトの価値が高まる)という、好奇心を強く刺激する面白さがあります。

これらの営みにより、業界全体を通したデジタルシフトが実現し、土地や建物、産業の真価をさらに拓くことができると考えています。

VPoPの久保が入社3ヶ月で整理した図解

estieはもはや不動産テックではない

実は私は、estieをもはや「不動産テック」だとあまり認識していません。

先ほども申し上げた通り、estieは不動産という枠組みに限定されない様々なマッチング・取引の活性化を応援する企業です。

企業とオフィス、メーカー(荷主)と物流施設、旅行者と観光資源。それだけでなく、土地とビジョン、人とお金も含めたマッチングを活性化・最適化することを目的としています(話は逸れますが、私はこの「マッチング」という言葉がいまいちピンときていないので、どなたかこれを表現するいい言葉を思いついた方は教えてください)。

ここまで読んで「いや不動産テックやんけ」と言う方もいると思いますが、個人的に私は不動産そのものへの関心以上に、この経済活動全てが行われるバカでかい舞台に対して、その活動を支援するためのデータが整備されていないと言うとんでもないギャップに対して面白みとやりがいを感じています。

従って、世の中で起きている何かしらに課題意識を持っている人は、多少無理やりにでもestieの向かう方向性と個人の志向性とをリンクさせることができるのではないかと思っています(笑)。

さいごに

金融機関各社から大きなご支援と期待を頂いた今回の資金調達により、estie ではさらにアクセルを踏み込むことができるようになりました。個人的な話ですが、私はestieに入社して3年が経過した今が一番「いける(根源的な価値に近づいている)」と思っており、ここから始まるestieや業界の新しい展開のわくわくをお客さまや将来の同僚と共有したいと考えています。

estieがやろうとしていることを自分なりの解釈で表現すると、それは「ビジョンを持った個人・不動産事業者または投資家が、出塁ではなくホームランを狙い、より面白い未来を実現するためのデータインフラを整える」ことです。

不動産という、全ての根幹を支える産業の真価を拓くことは、都市の活性化を引き起こし、日本経済の発展に大きく寄与することができます。市場の大きさ、都市をデータドリブンに作る未来などワクワクするトピックはたくさんありますが、上述した壮大なテーマに対してestieが今世の中に提供できている価値はまだ恥ずかしいほどに小さいです。

是非これを自らの手で大きくしていきたいと思える方がいれば、一度お話しできると嬉しいです。

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