データサイエンティストはコンパウンドスタートアップとどう向き合うのか

こんにちは。estieでデータサイエンティストをしている馬場です。

estieにはデータサイエンティストが3人おり、データマネジメントグループ(以下DMG)という全社横断的にデータに関するソリューションを提供するチームに所属しています。

最近はこちらで紹介されているように主にSnowflakeからデータを取ってきて日々様々な機械学習プロジェクトやデータ分析に取り組んでいます。

このチームでやっていることとして例えば

  • テナントの入退去予測
  • 各不動産プレイヤーの物件売買動向分析

などが挙げられます。

【実践編】コンパウンドスタートアップの作り方 - estie inside blog にあるように、estieはコンパウンドスタートアップ戦略をとっているのですが、その中から今回はデータサイエンスに焦点を絞ってどう取り組み、どういう課題に直面し、それをどう解決しようとしているかを書いていきたいと思います。

それではしばらくの間おつきあいください。

直近半年の進め方:

estieは既に正式リリースしているもの・まだ世の中に打ち出していないものを含めたくさんのプロダクトを開発しているので、幅広いニーズに応えるため、この半年様々なアプローチをとってきました。

  • それぞれのチームにヒアリングをし、一緒にやっていけそうなプロジェクトを見つけそれに取り組む
  • 開発チームだけでなく、ビジネス側のメンバーと顧客ニーズのある機能のPoCを行う
  • ある程度汎用的なトピックを見定め、それをユースケースに適合するようにチューニング・特化させていく。この場合1つ目のようにヒアリングすることもあれば提案として持っていくこともある

実際そこからいくつかのプロジェクトに取り組み、

  • 分析結果から示唆を得る
  • 機械学習を用いて結果(例えば予測モデルだと○○になる確率がX%みたいなもの)を出す
  • 既存の機械学習モデルを改善する
  • (集計や計算結果を表示する)ダッシュボードが操作・閲覧できるようにする

といった結果は得られました。

しかし実際プロダクトの中で有効活用されているのかというと、そこはうまくいきませんでした。

見えてきた課題:

うまくいっていない、と感じたのは以下の2点です。

1.ビジネス課題との連携が薄くなり、芯をくった課題解決ができていない

様々なプロダクトの理解が必要になるものの、1人1人が全てのプロダクトを深く理解するのは難しく、結果注力度合いが分散し、一つ一つのプロダクトへの理解が薄くなってしまいました。
もちろん自らもプロダクトは触るので、実際に自分が使う場合もしくはユーザーさんの代表的な使い方というのはある程度把握しています。
ですが、プロダクトの性質上皆が同じ使い方をするわけでもないですし、新機能がリリースされたりするとそれが複数のプロダクトで進行すると全てをラグなくキャッチアップし続けるのは困難です。結果として作った機能が出来上がる頃にはその課題は緩和されていたり、ユーザーの構成やニーズが変化していたりすることがままあり、結果としてmust haveな機能になっておらず大きなインパクトは残せず終わることになります。

2.適切なタイミングでデリバリーできない

1を乗り越えて必要なものを作れたとしても最後にはタイミングの問題が残ります。
スタートアップにおいては開発の優先順位や顧客ニーズなど状況は目まぐるしく変化します。一方でデータサイエンスを使った機能は時折研究的要素が入り完成まで時間がかかることがあり、気が付いたら今欲しい機能はそれではない、ということはよく起こります。開発したものが無駄になるわけはないのですが、実際にプロダクトに載せてお客さんに使ってもらいながら検証していこうとするとそれが難しく、ものは完成したが評価ができないということが起こります。

解決に向けて

前節で挙げた課題を解決するために特定のプロダクトに入りこみ、

  1. プロダクト自体をより深く理解し
  2. その先にいる顧客理解も深め
  3. 開発フローの足並みを揃える

ということを促進するため、横断的にユースケースを拾ってくる形から1人1人のデータサイエンティストがそれぞれコミットするプロダクトを1つ決め、担当するプロダクトをその開発チーム及びビジネス職の人たちを二人三脚で作っていくことにしました。

それにより、中途半端なものをたくさん供給するのではなく、数は少なくとも深い価値を提供できるようにすることを目指してチーム構成を変更しています。

個々がシンプルに別々のプロダクトに価値を出していくという形の延長線上には一見コンパウンドスタートアップの目指す各々のプロダクトが連動して発展していく姿がなさそうに見えます。しかし今まで取り組んだことの中にも”これはどこどこでやったあの手法が使えるぞ”とか”このプロダクトで扱うデータにはないけど別のプロダクトのデータにはこれこれというカラムがあって、それはこうすれば結合できるのでうまくやれそう”ということはいくつあり、そういった知見を全体として蓄積していくことでシナジーや将来的な全体最適化が見えてくるはずだと確信しています。

最初から汎用性を意識して計画的にどうにかしようとするのではなく、取り組む中でプロダクト間の共通点をうまく使ってショートカットを見つけたり、別のプロダクトのしくじりを糧に新しいプロダクトでは同じことをやらないようにして成功確率を上げる、といったところから始めていければと思います。

estieの機械学習が関係する大きなトピックとして今後取り組むことになるであろうものは価格、予測、レコメンデーションなどです。

例えば価格に関していえば、オフィス賃貸に関連する推定賃料が既に不動産のプロの方々向けサービスとして提供されています。これを売買のコンテクストでやるとどうなるのか?オフィス以外のアセット、例えばホテルでは?物流施設では?住宅(賃貸)では?などを考えるときに有用な知見は当該取組みから吸い上げられるはずで、新たなアセットタイプやサービスへの応用がいくつもできていくのではないかと思います。

この取り組みが進んでいくと、そのときはじめて全体最適をするにはどうすればいいのか、プロダクト間の連携を考えるとどうすると良さそうか、あるプロダクトから別のプロダクトにどうユーザーが流れていくかなどもっと大きな構想を練る下地が出来上がることになるはずです。

そうすると、シングルプロダクトを扱っている、もしくは独立したマルチプロダクトでは経験できないような取り組みができるのではないかと考えています。

最後に

いかがでしたでしょうか。

もしデータサイエンスを活用したプロダクトを一緒に作っていきたい、と思っていただけた方、特にプロダクトマネージャーやソフトウェアエンジニアの方、ぜひ一緒に働きましょう!

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