プロダクトに魂を込める方法


こんにちは。estieでPdMをしている三橋です。
最近、estieでPdMよもやまをしていると、「プロダクトの力ってすごいよね」「プロダクトの力をもっと信じたいよね」という声をよく聞きます(「よもやま」ってなに?という方はこちらをどうぞ)。

この発言の意図を、私は「プロダクトドリブンでもっと事業の成長スピードを上げられるよね」、要は「プロダクトにもっと魂を込めた方が良いよね(超自分勝手な解釈)」ということだと理解したのですが、改めて考えてみると深い言葉だなーと思ったので、今日はそれに関して自分の想いを好きに述べようと思います。あくまでも個人の考えなので異論は大いに認めます。

この記事で伝えたいこと

  • PdMは顧客から言われたものをそのまま作ってはいけないし、顧客が求めていないものも作ってはいけない。この2つの矛盾するアプローチを同時に満たす必要があるからこそ、PdMの仕事は面白く、難しく、やりがいがある。

  • プロダクトに魂が込められているかどうかは、そのプロダクトの「未来」に関する想い・ビジョンの有無であり、PdMは常に未来に想いを馳せ、熱量高くチームに語りかけるべきである。

PdMは難しいけど面白い

「PdMって体系的に学ぶことができないんですよね」と、同僚のPdMが言っていたことがあります。それを聞いた時、確かに最初からPdMの人って聞いたことがないし、多くの人はビジネス職かエンジニア職からの転向だよな、と思った記憶があります。

しかし、なぜPdMを体系的に学べないのでしょうか?
その難しさの理由は、ひとえにPdMの業務の複雑さだと思っています。

例えば、 私はPdMは以下の2点を意識すべきだと思っています。

  • 顧客から言われたものをそのまま作らないこと

  • 顧客が求めていないものを作らないこと

あれ?

矛盾してない?

そう思いますよね。

そうなんです。一見矛盾しているんです。

でも、PdMはこの矛盾する両面性を内包しなければいけないと私は思っています。
だからこそ、PdMの仕事は面白く、難しく、やりがいがあるのです。

それぞれについてもう少し詳しく言語化してみます。

顧客から言われたものをそのまま作らない

顧客からの要望、または営業担当が顧客から持ち帰ってきたフィードバックをプロダクトに反映していくだけなのであれば、そのチームにPdMは必要ありません。

もちろん、PdMがカバーすべき領域(=プロダクトマネジメントトライアングル)は下図のように多岐に渡るので、顧客の声を聞くことは重要ですし、それらを適切に管理することはプロジェクトマネジメントの側面からも欠かせないものでしょう。


ただし、ただ顧客の要望を聞いてその優先順位を並び替えているだけだと、プロダクトマネジメントトライアングルの極々狭い領域の情報だけでプロダクト全体に関わる意思決定をしていることになり、あるべき姿とは言えません。

考えてみてください。

あなたはどちらのPdMと一緒に働きたいですか?

  • 顧客要望をバックログで優先順位管理をして、そのまま作るだけのPdM

  • 顧客要望の背景にあるインサイトを探り、仮説を持ちながら総合的に何を作るかを決めていくPdM

どちらがうまくいくのか?と断言することはできませんが、私なら絶対に後者のPdMと一緒に働きたいです。なぜなら、シンプルにその方が面白いしワクワクするから。自分またはチームで仮説を作り、その仮説を顧客や市場にぶつけて検証する、これこそがPdMのやりがいだと私は思っています。

もちろんそんな難しいことを考えずにサッと顧客の声を反映してしまった方が良い時もありますが。

顧客が求めていないものを作らない

一方で、どの顧客も求めていない=市場にニーズがないものをつくることは避けなければいけません。これについては説明不要なので割愛します。

魂⁨⁩が込められたプロダクトってどういうプロダクト?

続いて、魂が込められたプロダクトを言語化してみます(完全に私の主観です)


誤解のないように付記すると、決して目の前の課題に向き合うことが悪いと述べたいわけではありません。そもそもエンタープライズ的なプロダクトだと、特定の顧客に向き合うことは当たり前ですし、そうではないとしても、⁨プロダクトのアーリーフェーズではむしろ特定の顧客の顕在化している課題に向き合うべきと私は考えています。なぜなら、特定の顧客の課題を解決出来なければ、産業全体の大きな課題など到底解決できるわけがないからです。

従ってプロダクトに魂が込められているかどうかの違いは「現在」の状況だけでは判断できず、「未来」に関する想い・ビジョンの有無だと私は思っており、例えば、

  • そのプロダクトを「未来で」どのような状態にしたいのか?

  • そのプロダクトが「未来で」産業内にどのような変化を及ぼすのか?

のようなことを自身の言葉で述べることができれば、その仮説が正しいかどうかは結果論なので別として、プロダクトに魂が込められている状態だと私は思っています。

平凡なアプローチをとるな

現在私は総勢5人(BizDev、PdM、デザイナー、エンジニア2人)のチームで新規プロダクトの立ち上げを目指して動いているのですが、つい先日大きく方針を展開しました。

私のいるチームは、中長期的に我々のプロダクトで成し遂げたい幾つかのマイクロサービス(顧客への提供価値となり得る切り口)と、それらの融合によって実現できる世界観をチームの共通認識にしつつ、複数の顧客をターゲットとして仮説を検証している真っ最中です。

そのうちの1つのマイクロサービスを特定の顧客にぶつけてまずは小さく仮説を検証しよう、という動きがあり、当初は顧客にとってそのマイクロサービスが必要である課題背景を整理し、ビジネス要求をつくり、それらをすり合わせながら開発を進めていくような流れで進む想定でした。

しかし、ある時「この進め方は平凡なアプローチでestieらしくない」「今ある情報で、もう顧客の期待値よりも数倍高い価値のプロダクトをつくれるのでは?」とふと思い、次の日の朝、その考えをチームにそのまま伝え、「この先数週間の調整時間が勿体ないから先に作ってしまわない?」と提案をしました。

すると、他のチームメンバーも、

  • 1週間くらいあれば作れるからもうつくり始めよう! by エンジニア

  • 最短で変化を出すことにもっとこだわっていこう! by BizDev

  • ナイス提案すぎる! by デザイナー

と賛同してくれて、結果としてその日からチームの動き方が大きく変わりました。

この体験から何を伝えたいのかと言うと、

  • 自分とチームが信じられるプロダクトがあるなら、顧客と度重なる調整・すり合わせなんかせずに、先に動くものを作ってしまった方が良い

  • 顧客に動くものを提供して触ってもらった方が早く・正確なフィードバックを得られる

  • 狭い領域ならMVPなんて言わずに最初から顧客の期待値を大きく超えるものを作ってしまえ

と言うことです。

もちろん、このようなアプローチが選択肢にあること自体がプロダクト組織の強さであり、普通はそんなに早く作れないよ、と言う声も聞こえてきそうですが、平凡なアプローチで「顧客の期待値を超えられるの?」「そこに魂はあるの?」と聞かれたら、率直に「はい」と言えるケースは少なそうです。

魂⁨⁩を込めたプロダクトにするためにやるべきこと

最後に、プロダクトに魂を込めるためにやるべきと私が思うことを書きたいと思います。

  • 未来志向を持つ

時間軸は何でもいいので、自身が持つプロダクトを最終的にどうしたいのか、なぜそうしたいと思うのかを言語化することは重要です。未来志向を持つことでこそ、プロダクトおよび事業の非連続的な成長を実現できる可能性が高まると思っています。

  • 徹底的に顧客の立場になって考えてみる

顧客からの直接的な要望や営業担当経由のフィードバックだけを読んで顧客のことを理解したつもりになってはいけません。顧客の業務を徹底的に解剖したり、徹底的にヒアリングしたり、実際にその業務を体験してみたり、もっともっと顧客やその業界の理解を深めないといけません。

ちなみに、私がつい最近新規プロダクトの立ち上げ組織に配属されるにあたってやったことは、ターゲット顧客との商談議事録を3年分遡って全部読むことでした。もちろん、これだけで顧客の立場になれたとは到底思いませんでしたが、表面的な情報だけで分かった気になって考えるよりは数倍マシだと思っており、少しでも顧客の気持ちになって考えられるようになることは、プロダクトに魂を込めることでもあると思っています。

  • 良い仲間を見つける

悲しいですが、PdMひとりでは何もできません。PdMの熱い想いが伝播し、同じ想いを持つBizDev・デザイナー・エンジニアと一緒に動いてこそ、プロダクトに魂が込められた状態になっていくと思います。

余談ですが、以前PdM数人とHRBPの担当でよもやまをしていた時に、「estieのPdMはみんな声が大きくて圧を感じる」と言われたことがあります。笑 この言葉をポジティブに受け止めると、「estieのPdMはそれぞれ熱い想いを持っており、常に熱量高く話しているから」と言えると思うのですが、これこそがestieのPdMがプロダクトに魂を込めているということの現れかもしれません。

終わりに

最後までお読みいただきありがとうございました。PdMほど役割が多岐にわたる職種はなく、だからこそ、私は「PdMが想いを持つこと」が重要だと思っています。

この記事を読んだ方で、「私はプロダクトにこうやって魂を込めていたぜ!」という想いや経験がある方は、ぜひ一度カジュアルにお話しましょう!!

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