経営陣を巻き込んでLEADING QUALITYの輪読会やってみた


こんにちは!estieでQAエンジニアをしているmacho(粕谷)です。

私ごとですが6月で気づけばestieに入社して3年が経過し、時間の流れの早さに驚いています。

さて今回は、先日社内で経営陣・事業責任者を中心に「LEADING QUALITY」の輪読会を実施したのでその時の様子や学びを書いてみようと思います。

輪読会をするに至った経緯

estieはコンパウンドスタートアップを志向しており、複数のプロダクトを並行して立ち上げながら相乗効果を産む開発戦略を取っています。

プロダクト数が増えるにつれ、以下のような理由から、インシデントやお客様のフィードバックをいただく機会が以前より増えました。

  • ユーザー数が増えサービス利用件数も増加した
  • それに伴い、様々な観点でプロダクトを見られ触られるようになった
  • 成熟しているプロダクトと、新規のプロダクトを同時に利用するユーザーも多く、全てのプロダクトを同品質で届ける必要がある

「QAエンジニアやテスターを増やせば最低限の品質は担保できる」といえばそれまでかもしれません。

しかし「QAエンジニアやソフトウェアエンジニアだけが意識するものでなく、会社としてみんなで意識すべきものではないだろうか? さらに立ち戻ると、そもそもestieにとって品質ってなんだろう?」という考えや疑問が生まれました。

そのため改めて会社として品質を大事にしたい。みんなで品質に向き合うためにまずは経営トップの意志が必要であると考え輪読会を実施するに至りました。

LEADING QUALITYとは?

ここはあくまで私なりの本書の解釈や感想を含んだ解説になります。

偏った内容になっている可能性があるので、翻訳者のMark Wardさんご本人がLEADING QUALITYについて書かれていたQiitaの記事を併せて載せさせていただきます。

『LEADING QUALITY』翻訳者の偏執的こだわりメモ #アドベントカレンダー2023 - Qiita

LEADING QUALITYはプロダクト開発における品質に焦点を当てた本です。

技術書というよりはビジネス書のニュアンスが強く、QAエンジニア・ソフトウェアエンジニアに限らずプロダクトオーナーやビジネスメンバーにも読みやすい内容になっています。

ボリュームも100ページ強とコンパクトにまとまっているため読みやすいです。

本書は大きく3セクションで構成されています。

セクション1:品質リーダーになるには

このセクションでは、"社内での品質の扱われ方・捉えられ方に影響を与えるにはどうしたらいいか" が語られています。

組織の品質文化を変えていくためには、まず現在の組織内の品質ナラティブを理解する必要があるというのが本書の主張です。

※ 品質ナラティブとは、企業で品質について考えたり話したりしているその「語られ方」のこと

品質ナラティブには3つのタイプがあります。

(P. 20)

  • 責任ナラティブ (The Ownership Narrative):誰が品質に責任を持つかが考えられ、語られている

  • テストナラティブ (The “How to Test” Narrative):品質向上につながる正しいテスト技法はどれか・どのツールを使うべきかが考えられ、語られている

  • 価値ナラティブ (The Value Narrative):品質に投資した場合の見返り(ROI:投資収益率)が考えられ、語られている

その中でも価値ナラティブは「品質にフォーカスすることで組織にもたらす価値」について語られています。

価値ナラティブは「収益性」「コスト削減」「リスク軽減」の3つの主要な分野に焦点を当てて議論することが重要で、まず「収益性」を考えて議論し、そこから「コスト削減」や「リスク軽減」と結びつけて品質を語ることが品質チームがコストセンターではなく企業の成長に貢献する資産としてみてもらうために重要だと書かれています。

また、品質文化の醸成についても触れられており、品質のリーダーシップを発揮するためには影響力と説得力が必要です。漠然とリーダーシップを発揮したいと思ってもそこに影響力・説得力がないと変化を起こすことは難しいです。

ここは私自身の課題でもあるのでコツコツ信頼を積み上げて仲間を増やし、リーダーシップを発揮できる状態を作っていきたいです。

セクション2:戦略的品質に意思決定を下す

このセクションではテストナラティブを中心に、"品質戦略を策定する際に自信を持って大きな意思決定を下せるようになるために必要な内容" が語られています。

ここ数年QA界隈で話題に上がることの多い自動テストについては、ご存知の通り “自動テストは銀の弾丸でない” ため正しく活用する必要があります。

また、QAのアプローチ方法は、プロダクトの成熟度に応じて大きく3つにカテゴライズされるとされています。

(P. 52)

  • 実証段階(The Validation Stage):プロダクトマーケットフィット(プロダクトが市場に受け入れられている状態)の模索

  • 予測可能段階(The Predictability Stage):スケーリング(顧客数・アクセス数などの規模の拡大)に耐えるインフラの構築

  • スケーリング段階(The Scaling Stage):負の影響を最小限に抑えたプロダクトのグロース

estieでは複数のプロダクトを並行して開発しており、かつ複数のプロダクトを同時契約されているユーザーも多いため、それぞれのプロダクトの成熟度を正しく判断し適切なアプローチを取ることはもちろんのこと、ユーザーの求めている品質についても意識することが大切だと感じました。

セクション3:成長を加速させるチームにする

このセクションでは、"組織が重視している最も影響度の高い活動にチームが集中するための手段" について語られています。

会社やチームの成長指標について語られており大きく3タイプに分類されます。

(P. 91)

  • アテンションベース(注目ベース):B2C企業でよく適用される

  • トランザクションベース(取引ベース):Eコマースやマーケットプレイスを手がける企業でよく適用される

  • プロダクティビティーベース(生産性ベース):B2B企業でよく適用される

成長指標が明確になると品質の優先順位がつけやすくなり、それに応じたテストが実施できるようになります。

品質戦略のリードについては、兎にも角にも明確なビジョンを持つことが大事とされています。明確なビジョンがあれば正しい戦略がついて来ると。

まずは自分のビジョンを定め、それがプロダクトや会社のビジョンとアラインがとれている状態を目指すことが大切です。

輪読会での議論・学び

輪読会は1回60分の枠を計3回実施しました。参加者に事前に本書を読んできてもらい、当日はCTOの岩成や私が適宜解説を入れつつ、論点になりそうなポイントを深掘って議論する形で実施しました。

その中で議論が盛り上がったポイントをいくつか紹介します。

ポイント1:3つの品質ナラティブのうち、estieではどれに当たる会話が多い?

再掲 (P. 20)

  • 責任ナラティブ (The Ownership Narrative):誰が品質に責任を持つかが考えられ、語られている

  • テストナラティブ(The “How to Test” Narrative):品質向上につながる正しいテスト技法はどれか・どのツールを使うべきかが考えられ、語られている

  • 価値ナラティブ (The Value Narrative):品質に投資した場合の見返り(ROI:投資収益率)が考えられ、語られている

本書では3タイプの品質ナラティブについて語られていますが、estieではどのタイミングでどのナラティブが語られているか議論してみました。

開発の深いところでは、責務を明確にするために責任ナラティブが活用されたり、その手法についてテストナラティブが使われたり、どのテストを作るべきかなどについて価値ナラティブが浸透していました。

全社的に見れば、責任の押し付け合いのような責任ナラティブはなく、QA会(※1)など顧客体験を職種・部門問わず担保する文化となっているように感じました。

一方で、どのように顧客体験を担保するかのテストナラティブや価値ナラティブはまだまだ十分でないという課題も見えてきました。

※1:バグバッシュに近い活動のこと。詳細は「開発速度と品質、どちらも妥協しないQA活動」株式会社estie 粕谷 恭平 氏| Qbook内の「4. 限られたリソースで効率的にプロダクトの品質を担保する方法」に記載しています)

ポイント2:イノベーター理論に基づいた「プロダクトの成熟度」とestieで定義している「プロダクトの段階」はどう整理できる?

再掲 (P. 52)

  • 実証段階(The Validation Stage):プロダクトマーケットフィット(プロダクトが市場に受け入れられている状態)の模索

  • 予測可能段階(The Predictability Stage):スケーリング(顧客数・アクセス数などの規模の拡大)に耐えるインフラの構築

  • スケーリング段階(The Scaling Stage):負の影響を最小限に抑えたプロダクトのグロース

本書ではプロダクトが大きく次の3つの段階に分けて表現されていました。

これとは別にestieが社内で独自に定義しているプロダクトの段階についての考え方(開発からプロダクトマーケットフィットを経てスケールするまでの流れ)とどう整理できるかについて議論してみました。

議論の結果二つを掛け合わせてCTOの岩成が作成した図がこちらです。

CTOのNariが作成した図

ポイント3:estieのメンバーに「品質とは?」と聞いた時に返ってきて欲しい内容は?

議論をまとめると以下のような結果になりました。

品質は広い概念なので、返ってきてほしいのは「顧客への提供価値」。

返ってきて欲しくないのは「品質はあくまでリスク回避」。

estieの社員(特にQAエンジニア)は顧客視点を持てることや考えられることが大事だよねという結論に至りました。

ポイント4:estieで「品質をみんなの問題にする」ためにはどのようなアプローチが考えられるか?そのために足りていないことは?

ここでは代表の平井が言っていた言葉が個人的に印象に残っています。

「ユーザーにとってはプロダクトの品質以外にも、カスタマーサクセスの対応や質も重要な品質だよね。プロダクトの品質にはまだ課題があるとしても営業やカスタマーサクセスの対応がいいから期待するみたいなこともあると思うのでそこまで含めて顧客目線での品質。」

代表のビジネス視点での品質についての発言にさすが!と思わされたと同時に、プロダクト内に閉じた開発側の視点に寄った品質を見るのではなく、視点を顧客とした目線で広く見る必要があることに改めて気付かされました。

estieは開発チームとビジネスチームの垣根が比較的少なくお互いに協力しながらプロダクトを作っていけていると自負していましたが、QAとして実際に顧客定例に参加するなど直接的にお客様の生の声を聞ける機会を増やすことでさらによくすることができそうと感じました。

輪読会を通して

まずはQAエンジニアの私個人の感想として、品質を蔑ろにしている企業であれば経営陣・事業責任者の時間を押さえてこのような機会を作ること自体が難しかったと思いますが、職業柄自分が普段から意識している品質をテーマにした議論をすることができたのはシンプルに良かったです。

それぞれがestieにおける品質についてどう考えているかを話す良いきっかけとなりました。

また、estieでは会社の横断課題として今期注力する開発課題を決めて取り組んでいるのですが、今期からその注力課題に「品質」が追加されることになっていました。この輪読会が品質についての啓蒙活動を進めていくための第一歩になったと思います。

今後は社員一人一人にもLEADING QUALITYを手に取ってもらうため啓蒙活動を続け、2024年下期が終わる頃には今よりも少しでもestie全体の品質についてのモメンタムが上がり顧客に価値提供できる状態を目指していきたいです!

最後に

estieでは「産業の真価を、さらに拓く。」というPurposeを掲げ、コンパウンドスタートアップとして複数プロダクトを並行して立ち上げながらそれぞれのプロダクトが相乗効果を生むような攻めの開発をおこなっています。

それらのプロダクトの品質をQAチームとしてリードし、estieという組織の品質に向き合ってくださる方を探しています!

とはいえ「不動産ドメインよくわからない」という方もたくさんいることと思います。

そんな方にも不動産ドメインや、estieで働くことの楽しさをお伝えしたいので一度お話しする機会を僕にください!(と熱いことを言いつつ、もっとラフにQAやテストについてのお話も大歓迎です)

守りだけでなく攻めのQAチームを私と一緒に作りましょう!

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