売る覚悟がないならプロダクトマネージャーを名乗るな

この記事は、estieのプロダクトマネージャーによるブログシリーズ「PM Blog Week」第1弾8日目の記事です。前回の記事はフィードバックから考える”ちょうどいい”プロダクト品質です。

はじめに

こんにちは、estie(エスティ)VP of Productsのtakuya__kuboです。11月のPM Meetupに向けてestieのPMメンバー全員でスタートしたestie PM Blog Weekもラスト。アンカーブログとして書かせていただいております。本日は「プロダクトマネージャーは売ってなんぼ」という言説を述べたいと思います。

本ブログは、マネーフォワードさんのイベントで話をした内容を下敷きに、特に「売る」というプロセスについてフォーカスして書いています。

ブログの前提として、プロダクトマネージャーという職種は以下のように「役割」として捉えています。



これは当然のことですが、プロダクトマネージャー(PM)は、製品の開発にとどまらず、そのプロダクトが市場で成功するための責任を負っています。特に、プロダクトの立ち上げからグロースフェーズに移行する際には、PMの役割は大きく変わっていきますし、多岐にわたります。

しかし、役割が変わりうる中でも一つ確かなことは、PMが持つべきものは「自ら売る覚悟」だということです。単にプロダクトを作るだけではなく、その価値を市場で証明することがプロダクトマネージャーの真の役割です。この記事では、なぜ「売る覚悟」が重要なのかについて掘り下げていきます。

プロダクト開発のステップ

新規プロダクトの立ち上げにおいては複数のフェーズがありますが、それぞれのフェーズでPMの役割は異なります。estieの開発プロセスに基づいて、各フェーズを見ていきましょう。


1. ユニット立ち上げ(BizDev)

最初のフェーズでは、PMはユーザーの課題を特定し、マーケットサイズの見立てを行います。ここでは、プロダクトの方向性へとつながる顧客課題を定めるなどビジネスディベロップメント(BizDev)の役割を担います。顧客のニーズを理解し、市場で解決できる価値を定義することが目標です。

2. プロダクト開発(BizDev+PM)

次に、具体的な製品開発が始まります。PMは、エンジニアやデザイナーと協力し、プロダクトの形を作り上げると同時に、リソースの確保やプロダクト開発に必要なパートナーシップの確立も行います。このフェーズでは、市場の期待に応えるプロダクトを具現化するため、技術面とビジネス面のバランスが求められます。

3. プレセールス(Sales+PM)

このフェーズでは、PMが特定のセグメントに向けたプロダクトの販売を行います。PMが「売れるプロダクト」に仕上げ、初期の市場投入や検証パートナーの獲得に成功することが重要です。顧客との対話を通じ、製品が本当に価値を持つかどうかを確認する段階です。

4. PoC(CS+PM)

ここでは、獲得した顧客とのPoC(概念実証)を通じ、プロダクトの品質向上に努めます。自らがカスタマーサクセスとして顧客に向き合い、製品の直接のサクセスを通じてユースケースをプロダクト固有のものにしていきます。顧客フィードバックを基に製品の改善を行い、プロダクトが市場にフィットしていることを証明する段階です。

5. GTM(営業企画+PM)

最後に、プロダクトの本格的な市場投入と成長フェーズへの移行です。PMは営業企画としての役割を持ち事業計画を作成し、新たなセグメントへの提供やセールスが販売可能な体制を整えます。セールスが販売しやすい様に顧客リストの創造やセールスしやすいデモ体験を構築するなどセールスイネーブルメントの役割を担ったりもします。新たなセグメント開拓の過程では製品を拡張するなど、成長させるための最終的なステップです。

勿論、ほとんどのフェーズで一般的なプロダクトマネージャーとしての振る舞い(プロダクトの意思決定)は担うのですが、主となる役割は、BizDevであったりSalesであったり、カスタマサクセスであったりと変わっていきます。大きな企業であれば、PMMや営業企画が独立して存在することでPM自身がすべてを担うのではなく、他チームと協働することもあるかもしれません。ただし、本当に新規プロダクトの立ち上げを成功させ、スムーズに成長を遂げる上では、立ち上げた本人が常に役割の主軸にいることが不可欠です。

こう見ていくと、プロダクトマネージャーという役割が特定の一つに留まることはないと言えます。

「売る」ということが最大の価値証明

上記のプロセスの中でも、「プレセールス」のフェーズが何より重要だと私は考えています。プロダクトを成功させる上で、最も確かな価値の証明は「売れる」ことです。どれだけ素晴らしい機能を持つプロダクトでも、実際に顧客が対価を払うことで初めてその価値は確立されます。

「想定する市場の中でどんな確率で購入意欲があるのか」「そのプロダクトにどのレベルの単価を支払うのか」こう言った具体的なニーズこそが、顧客が製品にどれほどの価値を見出しているかを測る最も信頼性のある指標だといえます。PMは、この価値証明を自ら行うことで、プロダクトが顧客にとって不可欠なものであることを確実に示さなければなりません。

「売る」ことは単なる営業行為を指すのでではなく、「プロダクトが顧客の課題を的確に解決していることの証」であり、プロダクトの存在意義を証明する最大の手段です。

estieにおける「卒業試験」

estieでは、プロダクトが本格的に市場で展開される前に、「セールスが売っても良い状態か」を確認するための「卒業試験」を導入しています。この試験では、プロダクトリーダー自らが顧客セグメントを選び、セールスを行うことで、特定のセグメントにおけるPMFを確認します。

PMFには、「特定セグメントに一定の価値を示す成約率や単価で売れたか」と「継続意向をもらえるプロダクト品質になっているか」の2点で測ります。この試験をクリアすることで、プロダクトが正式に市場に投入され、セールスチームによる販売が開始されます。卒業試験は、プロダクトが本当に市場に適合しているかを確認するための最後の重要なステップです。

すべてのプロダクトがこの卒業試験を一回でクリアするとは限りません。何度かフェーズを行き来することもあります。ただし、これらの試験をクリアしない限りGo To Marketを本格化することはありませんし、逆にこれらをクリアすることでセールスリソースや顧客基盤を有効に活用できるようになっています。

プロダクトマネージャー自身が「売る」べき理由

プロダクトの価値を最もよく理解しているのは誰か。それは、間違いなくプロダクトマネージャー自身です。もしPMが自らプロダクトを売ることができないのであれば、他の誰がそれを売ることができるでしょうか?プロダクトができた直後から、セールスチームにその役割を任せるのではなく、まず自分が顧客に向き合い、プロダクトを売ることで、その価値を証明すべきです。PMが売れるのであれば、その先きっとセールスチームも売れるようになります。しかし、PMが自信を持って自らの製品を売ることができないのなら、セールスチームが成功する可能性は低いです。

このプロセスは、プロダクトを広範囲に展開するGTMフェーズに入っていくためにも不可欠です。PMが「売れるかどうか」を自ら検証し、そのフィードバックを製品の改善に反映させることは、プロダクトが成長するための基本となるステップです。

「プロダクトを成功させる」という覚悟

改めてにはなりますが、プロダクトマネジメントにおいて最も重要なことは、単に「プロダクトを作る」ことではなく、価値のあるものを顧客に届けることです。プロダクトマネジメントの方法論やフレームワークが多く出回り、「プロダクトマネジメントはこういうもの」という何処となく型にはまったイメージが出来上がりつつありますが、本質的には、顧客が「お金を払ってでも欲しい」と思える価値を提供することが全てです。

もし、この「価値」を証明するプロセスを他者に任せるとしたら、それはプロダクトマネージャーの本質的な役割を見失っていると言えます。プロダクトマネージャーとしての責任は、製品を作り、誰かに販売を任せることでは果たせません。自らがその価値を顧客に証明することが必要です。そうでなければ、プロダクトマネジメントの核心部分が失われ、「プロダクトを届ける」という本質的な役割が形骸化してしまいます。

その意味では、プロダクトの「売る」段階こそが、顧客がその価値を認め、対価を払う意思があるかどうかを確かめる最終的な瞬間です。もしPMがこの重要な役割を担わないのであれば、プロダクトが市場で成功するための確信を持つことはできません。この「売る覚悟」を持つことで、PMは単なる管理者ではなく、プロダクトの真の価値創造者としての役割を果たすことができます。

最後に

ここまでtoBプロダクトマネジメントかつビジネス出身者としての主張を強く行ってきましたが、estieのプロダクトマネージャーは全員が僕のようなセールス出身ではなく、そのバックグラウンドは様々です。主義主張がはっきりしているメンバーが多いので、この主張に対しても各々考えがあることだと思います笑

ただし、estie のPMは全員「プロダクトの成功のために必要があるなら何でもやる」という覚悟がある点では共通しています。その意味で、「新規プロダクトを立ち上げるのであれば自ら売ることは(一つの手段として)当然やる」という覚悟はあるでしょう。

さて、そんなestieのPMs と話してみたいと思った方、ぜひ11/6 開催のこちらのイベントやカジュアル面談などでお会いしましょう!お待ちしています!

estie.connpass.com

hrmos.co

© 2019- estie, inc.