コンサルタントがシニアPMになるまでに感じた壁

この記事は、estieのプロダクトマネージャーによるブログシリーズ「PM Blog Week」第3弾4日目の記事です。<<前回の記事 振り子のように違う職種にコミットして強い PM になっていく - estie inside blog>>

こんにちは。estie PMの冨田です。3月のestie PM Meetupに向けたBlogシリーズをやっていきます! (昨年書いた記事 製品機会発見〜芋づるを探せ〜 - estie inside blogも是非ごらんください)

さて、今回は自分自身のキャリアをテーマに書きます。

新卒コンサルタント

私は、新卒でコンサルタントになり、基幹システム更改PJに携わりました。新卒でコンサルタントを選んだのは特定の産業あるいは職種を選びきれず、将来やりたいことが出来るまで自分の能力を磨く場所として最適だと感じたからでした。

コンサルタントのキャリアは、クライアントが直面する複雑な問題を解決することから始まります。しかし、私は新卒だったため、ドメイン知識がほとんどなく、問題解決には試行錯誤が必要でした。その中で、私はとにかくお客様に積極的に質問し、業務の詳細を教えてもらい、それを資料としてまとめ、他部門との連携に役立てる情報の橋渡し役に徹しました。

この仕事の仕方を通じて、デプスインタビューや論理的思考力が身につき、ドメイン知識に依存しない問題解決能力が養われました。特に、事実に基づいて広く情報を収集し、問題の本質を追求するスタイルは、シニアPMに求められる仮説立案と検証の基盤となり、今振り返ってみても非常に重要な経験だったと感じています。

PM

コンサルタントとして働いているうちに、アドバイスやサービス提供よりも自分自身で事業を運営してみたくなり、事業会社に転職しました。その結果、肩書きはコンサルタントからPM(プロダクトマネージャー)に変わりました。

事業会社に移って驚いたのは、仕事のスピード感の違いです。コンサルタントはドキュメントベースで根拠を持った提案を行い、成果物は基本的に書類や報告書です。一方、事業会社のPMは施策そのものがアウトプットであり、その施策からアウトカムを出すことが求められます。根拠の有無や説得力、事実の客観性は求められるものの、最も重要なのは「結果を出すこと」です。この考え方は、当時の私にとって非常に衝撃的でした。私は、コンサルティングで培った調査・分析能力を基に、リスクを取って意思決定を行う事業会社ならではの経験を得て、スピード感を体得することができました。

コンサルタントがPMに転身して直面した壁

転職後、いくつかの壁に直面しましたが、そのひとつが「コミュニケーションパスの広さと深さ」でした。コンサルタント時代は、顧客の窓口部門を通じて、必要な相手と効率的にコミュニケーションを取ることができました。その際、窓口部門の担当者が他部門の専門知識を肩代わりし、まるで通訳のように私たちをサポートしてくれました。しかし、事業会社に入ると、さまざまな部門と直接コネクションを持ち、各部門の特徴や専門知識についてある程度理解し、会話できることが求められます。

例えば、物流システムのPMを担当していた際には、すべての事業部の商品が物流センターで取り扱われるため、各事業部や物流センター、そして間接部門とのコンタクトが不可欠でした。彼らとコミュニケーションをするためにはインドやブラジルの通関手続きや税法といった法律税務の知識に加え、各部署の特徴にも精通する必要がありました。具体的には、金型が1トンを超えることがありそのような商品は棚が壊れてしまうので棚に収めない前提でオペレーション設計をする、会計部が年に一度B/Sを確定するために非在庫商品で検収済み未出荷の商品価値を算定することがある、といった細かな知識です。このように、自社の製品に関連する人、部署、業務の幅広い知識を業務を実行するに足りる深さで身につけなければなりません。

このような「広さ」と「深さ」は、コンサルタント時代には体感できなかった、事業会社ならではの圧倒的な情報量を持ちます。その情報の海に溺れない、謙虚かつ効率的なキャッチアップ術を身につけることは、コンサルタント時代に枝葉の情報を切り捨てることに慣れていた私にとって、非常に大変でした。

銀の弾丸はないのですが、自分が単独で担当する領域については全容を把握して枝葉を切り捨てる、関連領域については時間を取ってキャッチアップする、自分が単独で担当する領域以外についてはキーパーソンの動向を観察して関与が予想される範囲だけキャッチアップするというようにルールベースで投資する時間を割り当ててその時間内でキャッチアップをするようにしていました。

シニアPM

シニアPMという役職には明確な定義がないものの、私は「1つの製品よりも、むしろプロダクト群や組織、さらには会社全体に影響を与える仕事をして初めてシニアPMを名乗るべきだ」と考えています。

新製品を次々と立ち上げるうちに、製品同士のシナジーや、製品と組織(営業、開発、カスタマーサクセス)との連携、さらには製品と経営とのシナジーに関心が高まりました。単一の製品にとどまらず、複数の製品やリソースが組み合わさることで、より大きな価値を生み出すことに注力し始めました。

例えば、製品Aを立ち上げることで、エンドユーザーが共通で使用する製品Bも同時に立ち上がり、製品Bが生成するデータXを活用して製品Cを強化する、という具合です。こうした戦略を実行していくうちに、自分の影響力が広がり、そろそろ「シニアPM」と名乗っても恥ずかしくないレベルに達したのではないかと感じています。

PMがシニアPMになる前に直面した壁

シニアPMに成長するにあたっては様々な壁に直面しました。その中でも特に自分の努力によって越えにくいと感じたものはプロダクト組織風土です。

というのも、「1つの製品よりも、むしろプロダクト群や組織、さらには会社全体に影響を与える仕事をして初めてシニアPMを名乗るべきだ」と定義するのであれば、「プロダクト群」あるいは「組織」にPMが影響を与えることによって業績を伸ばしていく思想や発想をPMより上位の経営層が持った上で経営計画をしていることが大前提になります。より具体的に言うならば、コンパウンドスタートアップのように製品同士のシナジーを効かせる事を志向していたり、あるいはPMがPO(プロダクトオーナー)的な性格を強く持っていて事業全体に影響力を及ぼす事を是としていなければ、「プロダクト群」あるいは「組織」に影響を及ぼすことは意思決定におけるパワーバランス上難しい部分があります。

私は今estieで成長実感を持って働いています。これはestieの経営戦略にコンパウンドスタートアップが取り込まれており、また、PM像が「プロダクトマネジメントを成立させる役割がPMである」とされている事から、売上・会社の成長に対してプロダクトマネジメント上最大のレバレッジを効かせるポジションに自分が入り込んでプロダクト間のシナジーを最大化させる事が是とされているからではないかと考えています。シニアPMとして成長するためには働く場所のプロダクト組織風土も大切だったと、今振り返ってみて感じています。

最後に

自分のキャリアを振り返ると、多くの発見がありました。ぜひ皆さんにも振り返りをしていただきたいですし、他の人のキャリアを聞くことも、自分自身のキャリアを見直すために有益だと感じます。もし「estie PM Meetup #5」に参加していただければ、きっと新たな発見があるでしょう。私も皆さんのキャリアについてお話を聞くことを楽しみにしています。カジュアル面談などでお話しできるとうれしいです。

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