JaSST’25 Tokyo 参加レポート Part 1

こんにちは、QAエンジニアの村上(社内ではmurashiと呼ばれることも)です。先日、estie QAチームでJaSST Tokyo 2025に参加してきました。世の中的にもホットなAIトピックや他社QAチームの事例セッションなど、中長期的なトレンドから明日使えるtipsまで幅広い学びがあったので、本記事では村上視点でいくつかピックアップしてご紹介できればと思います!

まとめ

いきなりですがまとめです!笑 今回のJaSST Tokyoを通して私が受け取ったメッセージは3つあります。

  1. AIの潮流に乗り遅れるな
  2. QAとはQAだけのものにあらず
  3. 問題に向き合い行動せよ

なお、ここでご紹介するのは私が参加できた一部のセッションに限ることをご了承ください。ここから、それぞれのメッセージに対してセッションを振り返りつつ詳細に触れたいと思います。

①AIの潮流に乗り遅れるな

今や誰もが感じていることだと思いますが、今回のJaSST TokyoでもAI関連の講演や登壇がいくつかありました。特に生成AIが開発エディタに組み込まれてからのエンジニアリングへの浸透は目覚ましいものを感じます。一方、QA領域にも当たり前のように入ってきていつつも、答えがなく過渡期の状態だとも感じます。前提として、AI×QAにはAI for QAとQA for AIの2種類がありますが、講演・セッションの中では主にAI for QA(QA業務でいかにAIを使うか)が語られていたように思います。

基調講演:How to Predict the Future 未来を予測する方法

今回のJaSST一番最初の講演です。QA関連に直接関係のある話ではありませんでしたが、初っ端からAIの可能性、AIとどう付き合っていくかの話があり、今回のJaSSTの主要テーマは「AI」なんだなぁと分かり印象的でした。講演の中にあった、「AIは悪意がある振る舞いを悪意がないように振る舞う」「AIの振る舞いを予測することは不可能なのでいかにドメイン知識をつけるかが大事」という話は、頭では分かっていながらあまりにも昨今のAIが優秀すぎるが故に頼ることが楽なので、改めて気を引き締める思いです。

セッション:AI4QA 業界人が語るAIと品質の真価とは

事業会社・SIer・コンサルファームという立場の異なる方々のパネルセッション形式の講演でした。立場は違えど皆さん同じ方向を向いているように感じました。まとめると以下がポイントだったと思います。

  • 暗黙知によって俗人化された作業も形式化されAIで代替えできるようになる
  • AIによって自動化される領域が拡張される結果、人間の責務は「判断」になる

ポイントだけ書くとまぁそうだよね、という感じなのですがセッションの中で出た

  • できるQAエンジニアは常にロジックで考えているわけではなく、これまでの経験値からパターンマッチングに近い形で考えることが多いと思う。これはAIの原理に近いと思うので、非定型作業部分の代替えもできるようになると思う。
  • AIを使うことは外注管理と同じ。丸投げが一番ダメ。

は、AIをいかに使いこなすかを深くイメージされているからこそのコメントで、さすがだなぁと感じました。(偉そうですが…)

セッション:テスコンNOW

本セッションは直接AIが関係したトピックではないですが、講演の最後に「今後のテスコンでは”AI開発ツール”をいかに活用できたかもポイントとして取り入れていく!」という話があり、おぉ!となりました。テスコンの位置付け・目的を鑑みると、そこに「AI」が入ることはQA領域においてもAI活用が必須スキルになる、と分かる発表だったなぁと思い取り上げました。

メッセージ①のまとめ

正直なところ、私自身少し前まで「ChatGPTすげー」「Cursorっていうエディタ最近よく聞くけどすごそう」ぐらいの感覚でAIトピックと接していたのですが、今は「この波に乗れないとだいぶヤバいのでは?」というちょっとした危機感を持ってAIツールを日々使っています。実際使うと便利すぎてAIツールがない時にどうやって業務していたかをもう思い出せません…笑 話が少し変わって、つい先日カカクコムが「AIエディタ「Cursor」を全エンジニア500人に導入」と発表したのを見ました。これを見た時、近い未来に「会社選びの最低基準はAIツールが自由に使えるかどうか」になるかもしれないと思いました。(実際もうなり始めてるかも)それだけAIが浸透してきているということが分かります。

estieでも、AIは今最もホットなトピックと言っても過言ではないです。特にAIを使っていかに開発生産性を爆増させるか、というテーマで日々試行錯誤が繰り広げられています。ことQA業務に関しては自動テストを書く時に部分的に使っているところはあれど、まだまだ使いこなせてはいないので(感覚的にはAIの潜在能力の30%も使えていない)、「高速な価値提供サイクルを支える」を実現すべく、AI for QA(というよりQA with AIかもしれない)のベストプラクティスを今後も模索していく所存です。

②QAとはQAだけのものにあらず

最近の潮流という訳ではなく元々言われていること(そもそもQAのためのQAの時代などなさそう)ですが、群雄割拠なSaaS時代の中で特にスピードと品質の両立を目指す上で欠かせない考え方だと思います。estieと同じような事業フェーズの企業に所属するエンジニアの事例は、具体的な状況は違えど似た立場にいる同志としてとても刺激を受けたセッションでした。

セッション:チーム全員で品質課題の改善のために取り組んだことを振り返る 〜いつからQAエンジニア不在では品質課題を改善できないと錯覚していた?〜

資料:チーム全員で品質課題の改善のために取り組んだことを振り返る / Quality improvement team reflection

このセッションを聴いて個人的に一番すごいなぁと思ったのは、チーム全員で品質に向き合い続けた、という点です。これはQAエンジニアがチームにいる/いない、は関係ありません。もちろん最初に手を挙げて引っ張る役割を持つ人は存在すると思います。チームにQAエンジニアがいる場合はその人になりがちかもしれません。ただ、品質は誰かが頑張れば良くなるものではなく、結局関係者全員で向き合い行動することが重要です。それを一つ一つ壁にぶつかりながらも発表者がファーストペンギンになって試行錯誤した結果一つの形にした、という点に魂を感じ感銘を受けました。講演のレポートではなくなってしまいましたがそれだけ感動した、ということが伝わると嬉しいです。

セッション:SaaSプロダクト開発におけるバグの早期検出のためのAcceptance testの取り組み

資料:SaaSプロダクト開発におけるバグの早期検出のためのAcceptance testの取り組み

前述したセッションとは構造的には対照的な印象を受けました(良い悪いの話ではありません)。何が対照的かというと、この事例の前提は開発者とQAエンジニアが役割としてきっちり分かれている、と感じた点です。かつプロセスもかなり整備されているからこそ見えた課題だろうなと思いました。同時に、今回の取り組みのためには開発者を巻き込むことが必須な中、チーム全員で同じ方向を向いてシフトレフト実現のために取り組んでいる文化がさすがナレッジワークさんだなぁと思いました。また感想メインの話になってきたので、少し内容に触れると私が一番共感した点は課題発生の背景として話されていた「開発者は意図的に開発者テストを怠っているわけではない」という点です。これは開発者以外にも言えて、「誰も品質を悪くしたい人はいない」と捉えることができます。QAエンジニアはこの前提で課題に向き合うことが大事だと思っていて、それがとても感じられる事例セッションでした。

メッセージ②のまとめ

セッションを通して、QAエンジニアの仕事とは?と改めて考えるきっかけになりました。正直な話、他社の事例は状況が違いすぎると「へー!すごい!ただうちではどうかなぁ。」と思ってしまうことが多いです。なので、個人的には自分の振り返りや熱の再点火に活かすことが良いなと思っています。そういう意味で二つのセッションを聴けてとても良かったです。

estieの開発組織は入社ブログで少し触れた通り高速開発 × 自律を体現した組織だと思います。その中でのQAエンジニアとしての動きもかなり刺激的なのでまとめてどこかでご紹介していければと思います!

③問題に向き合い行動せよ

このメッセージはJaSST最終枠の基調講演:「真の学び」が未来を拓く~ 成長するエンジニアのマインドセット ~」から受け取ったものです。これが言いたいがためのJaSST Tokyo 2025だったのでは?と個人的には感じました。本セッションは、エンジニアリングで使えるHowの話ではなく成長マインドセットと行動習慣の話がメイントピックでした。掻い摘んでまとめるのは本質が抜けそうで若干憚られるものはあるのですが、ポイントは以下だったように思います。

  • 人の成長は「学び」で決まる
  • 学び = 問題解決を通して自分の行動を変え結果を変えるもの
  • 学び続けることが卓越性(人のできないことをいくつできるか)を作る
  • 卓越性が人と組織を成長させる
  • 卓越性は問題解決と技術習得を通して獲得する
    • 問題解決:現場の問題をどれだけ解決するか
    • 技術習得:どれだけ問題解決のための道具を持てるか
    • (極論)問題解決に使えない技術は不要

ここで重要なポイントは「問題に向き合うこと」と「その解決のために行動すること」だと私は感じました。興味で始めた技術から始まるものもあるのでは?という意見もありそうですが、実体験から個人的にはかなり共感しています。まさに最近の話で、自分が向き合うべきことを若干蔑ろにして手広く手を出しすぎた結果、生産性が下がり、結果も中途半端なので達成感もなく、モチベーションが下がってしまうことがありました。これを脱するために私がやったことは「今何に向き合うべきか決めること」と「それ以外を一旦止めること」でした。向き合うべきことを決めるとそのために必要な考え方や技術が分かりその習得にフォーカスできます。フォーカスできると生産性もあがり、問題解決のスピードにも繋がります。もちろん人によってこの辺りの感覚は全然違うと思いますが、改めて共感する講演だったなぁと思いました。

最後に

JaSST Tokyo 2025参加を通して、一番の学びは自分たちestie QAの立ち位置を客観的に評価できたことだと思います。これも最後の基調講演でありましたが、外を見ることで自分たちの立ち位置が分かる、をまさに体感しました。まだ言語化できていない部分なので詳細は後々整理したいですが、ポイントはプロダクト開発におけるQuality / Cost / Delivery / Scopeの内、最も大事にしてることが何でそのために何をしているか、また通常諦めざるを得ないところも諦めないために何をしているか、ということだと思います。端的にいうとestieはこの辺りの諦めが悪いのと諦めないために組織文化でカバーできてる部分がありそうだな、と感じています。こういう気づきを持てたこと含めJaSST Tokyo 2025に参加してよかったなと思います。

JaSST’25 Tokyo 参加レポート Part 2を同じQAチームのmachoさん、Part 3を同じくQAチームの山本さんから公開される予定なのでそちらもお楽しみに!


ここまで読んでいただきありがとうございます!弊社の開発組織、QAチームに興味がある方ぜひカジュアル面談しましょう!ご応募お待ちしております。

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