データに基づいた判断を行い、業務の質とスピードの向上を実現
京急グループのプロパティマネジメント業務やコンストラクションマネジメント業務を一手に担う株式会社京急ビルマネジメントより、PM事業本部 PM第2部 松栄様に、estie マーケット調査導入の経緯や活用方法についてお伺いしました。
会社紹介
貴社の事業内容についてお教えください
当社の事業内容は大きく分けてプロパティマネジメント業務とコンストラクションマネジメント業務の2種類です。主な業務はプロパティマネジメント業務で、京浜急行電鉄が所有するオフィスビルや店舗、土地などのアセットにおいて、オーナーの代理となり資産管理という形で業務に携わっております。オーナーには「ビルの価値向上、快適さ」を、また入居テナント様には「利便性・快適性の提供」を常に考え、事業を行っています。
会社が抱えていた課題
課題を感じている部分はありましたか?
業務の効率化と属人化の排除
昨今よくDXと言われますが、人口減少の背景もあり働き方改革や作業の効率化を進めていかなくてはいけないという話は社内でもあり、自分達の領域なら何ができるのかを常日頃から考えなさいと言われていました。
我々の業務では、突発的に顧客と会うことや図面と向き合う時間も多いため、業務時間が長くなりすぎないよう他の業務については極力効率化を目指しています。
また、担当者がいなくなることで機能しなくなることがないように、仕事が属人化することを防ぎ、誰がやっても一定は同じ質が出せるようにもしたいと考えていています。例えば、交渉の場などにおいて、「競合のビルは坪20,000円だ」と言われた場合に、マーケット感覚の有無や、過去の問い合わせ・対応を把握しているかなどによって、言われた情報だけを鵜呑みにせず、適切な対応をとれるようにしたいと考えていました。
今知りたい特定エリア情報/ 物件の賃料情報の把握 賃料相場の根拠を網羅的な情報から出せないことも解決したい課題の1つです。
賃料設定を行うために、賃料相場をインターネットで調査し、大手仲介会社が公表しているデータを利用したとしても、それは主要エリアや駅周辺の情報に限定されます。そのため、今知りたい「特定エリア」の賃料相場を知るには、自社が保有する情報の蓄積からしかビルの価値を導き出せないことに問題を感じていました。
顧客からの申込みや交渉の記録はエクセルで管理していましたが、なかなか活用が難しく、タイムリーな情報ではないため、仲介会社から現在の他社の募集賃料の数字をダイレクトに提示されると、なぜこの金額が適切なのかという裏付けを出すことが難しい状態でした。
競合物件の賃料や動向は憶測するしかない点もネックでした。例えば、自社が固定の募集賃料で募集をかけている期間に、他社が市場に合わせて柔軟な賃料を提示していてもその情報を得ることができません。
同じようにオーナーから現状より高い賃料で募集してほしいと依頼されても、どのくらいなら募集できそうか、もしくは現在の賃料が適切な賃料であるという根拠を示す術がないのが課題でした。
導入の背景
estie マーケット調査 を知ったきっかけについて教えてください
京浜急行電鉄の財務担当者に紹介されたのが最初です。
私は本社へ出向していたこともあるので、レポートを受ける立場とレポートを上げる立場の両方を経験しており、オーナーがどのようなレポーティングをして欲しいかも理解していましたし、レポート作成で情報を集めるのが困難な部分、時間がかかる部分もよくわかっていました。
そのため、このサービスを知った時には「非常に面白いな」「このサービスがあれば生産性が向上する」と感じ、導入したいと思いました。
導入の決め手となったところはどんな点ですか?
特定のエリアや物件ごとの募集賃料相場が分かる点です。
賃料設定の会議で、この金額の根拠はどこあるのかを説明する際に、xx区〇〇にある同水準の物件や任意のエリアを指定し、そこから大幅にずれていなければ、合理的な賃料になると思います。「競合ビルは大体この値段だろう」というのと「estie マーケット調査を用いて他ビルの募集賃料を参考にした結果」というのでは、説得力や精度が大きく違います。
また、エリアの平均賃料においても従来は、駅近の物件も駅から離れている物件も入った広い平均賃料で判断するしかなかったのですが、estie マーケット調査を用いれば、自分が指定した任意のエリアの平均賃料を算出することができます。
私は、賃料を提示され「なぜこの賃料になったのか」と聞く立場であることが多かったので、estie マーケット調査のデータに基づいた賃料を提示されていれば判断の質とスピードがあがると確信し、そこが一番刺さったところです。
導入後の変化
導入後の変化についてお聞かせください
賃料設定に関する業務
決め手の部分でもお話ししましたが、一番の変化は、これまで判断に必要な募集賃料や相場がわからず、自社に情報がないとできなかったことを、estie マーケット調査導入後に簡単にできるようなったことです。
従来は賃料設定をする際、データ調査や資料作成の期間に3日ほど要していました。日中対応すべき業務を終わらせた後の時間で周辺賃料などを調査・整理して、次の日にチェック、3日目に議論の場に出す感じです。
いまはestie マーケット調査を使えばすぐに数字が出るので、事前の調査なしに打ち合わせのその場でestie マーケット調査を見ながら議論・合意し、あとは2時間くらい資料を整えれば提出できるので、相当速くなりましたし精神的にも随分楽になりました。
物件価値向上に対するモチベーションのアップ
またメンバー含め色々な動きに敏感になり、自社ビルに対する危機感を持つようにもなりました。
他社も含めビルのデータベースとしてスペックも閲覧できるになったことで、同じ築年数で他社のビルは満床なのに、立地も良い自社ビルはなぜ募集に難航しているのか、と考え直すきっかけになったこともあります。
ビル同士の比較がしやすくなったので、ライバルビルの設定が簡単に出来るようになりました。それにより、自社のビルがライバルビルに負けないようにするにはどうしたら良いか、相手の動向に合わせて自分達もこうしようと行動できるといいなと思っています。
例えば、自分の担当の隣のビルがエントランスを改修しそこのお客さんが喜んでいるという情報を聞いた時に、自分達もちょっとやってみるかとアクションを起こすとお客様から「やっと綺麗になったね」と声をいただくことがありました。20年〜30年長く契約していただいているお客様も多く、何もしなくても長く契約していただいているから満足しているだろうという考えではなく、より提供価値を上げお客様に喜んでいただくにはどうしたらいいだろうとお客様に向き合い続けていきたいです。
最後に
estie マーケット調査を導入したことで目指したい姿があれば教えてください
estie マーケット調査を用いて賃料という数字が見えることで、自社ビルを客観的に見て、外から見た価値を意識することで、お客様が入りたい、居心地の良いと思うビルはどんなビルなのかを考えるきっかけになればと思います。
それぞれの担当がビルを客観的に評価し、価値向上に向けて何をしていけばよいかを常に考えられるチームでいたいし、私たちの目指す姿です。
私たちのオーナーは鉄道会社なので、駅に近いビルが多く、何もしなくても負けない条件だと思います。しかし、現在は徐々に駅近の条件だけでは戦えないと感じております。駅前といういい武器があるのに、いい武器を使わなかったら宝の持ち腐れになってしまうし、駅近でなおいい物件も出てくるので、内外を客観視しながら自社ビルの価値向上を目指して行きたいと考えております。
estie マーケット調査が浸透することにより、業界はどのように変化すると思いますか?
お互いの情報や動きがわかるようになれば、おそらく賃料といった数字には差が出てこなくなると思います。他社が値段を変更したら、うちはどうするという判断を都度行うことになり、より適正価格に近づいていくはずです。広さや築年数があまり変わらない物件が並んだ時に、では何で選ばれてくるかを考えると付加価値だと思います。
それはエントランスを改修するなどのお金をかけなくてはできないものだけではなくて、それぞれのビルのストロングポイントを打ち出すようになるのではないでしょうか。例えば、ビルの内覧時に案内した人の印象が良かったり、手入れが行き届いている上に清掃員の挨拶が気持ち良かったり、プロパティマネジメント会社の人がビルを訪れると入居企業の社員さんから声が掛かる。そんなビルは素敵だと思いますし、長く入居したいと思っていただけると思うんですよね。
オーナーや管理会社など、そのビルに関わるすべての人が、自社のビルをより良くするために何をするべきかをより深く考え行動することでストロングポイントが生まれ、結果的に利用する人がますます気持ちよく過ごせるようになると思いますし、そうなってほしいと思います。