成約案件はすべてestieを活用 ― 三井住友信託銀行が語る、意思決定の進化
売買仲介領域をはじめとする不動産関連サービスの提供において、国内有数の実績を誇る三井住友信託銀行様。実は不動産投資のプロフェッショナルとしての一面も有しており、私募ファンドへのエクイティ投資と投資家向けファンドのアレンジメントという二つの柱のもと、多岐にわたる案件を手掛けられています。
情報収集と分析の効率化、高度化が常に課題となり、不動産市場の動向を的確に捉え、迅速かつ精度の高い意思決定を行うことが求められる中で、不動産投資におけるデータ活用の重要性、業務効率化がもたらす意思決定の進化、そしてこれからの不動産市場におけるestieの可能性とは何か。
三井住友信託銀行 不動産投資事業部の浅田様・柴山様、不動産企画部の山本様・長沼様に、estieの導入経緯や、導入によってもたらされた変化についてお話を伺いました。
estie導入前はどのような課題がありましたか?
情報収集の手間とスピードの限界
三井住友信託銀行の不動産事業では、仲介業務、不動産投資業務そのほかの業務においても、お客さまへ日々多くの不動産案件のご紹介を行っております。その中で、お客さまへ不動産案件の概要と一緒に提供する、不動産賃貸マーケットの分析は、市場調査や情報収集に多くの時間と手間がかかるため、限られた案件だけしかできておりませんでした。特に、複数物件をまとめて検討するバルク案件においては、情報の収集・整理・分析にかなりの時間を要する場面も多く、より効率的かつ精度の高い手法が求められていました。
以前は、案件ごとに賃貸仲介会社様やPM会社様に依頼して情報を取得する必要がありました。信頼関係に基づいたやり取りですので、都度お願いするのもやはり気を遣いますし、何より情報が手元に届くまでの時間的ロスも少なからず存在していました。
経験の浅い社員育成にかかる時間
不動産市場は日々変化しており、豊富な知識と経験、そして「肌感覚の相場観」や「仮説の構築力ならびに検証力」が不可欠です。一方で、人材の流動化や採用難、教育リソースの不足は不動産業界全体の課題でもあります。三井住友信託銀行においても、他事業からの異動などにより新たに不動産業務に従事する経験の浅い社員に対し、こうした知見をどのように継承していくのかは、長年の課題でした。従来は、実務経験を通じて時間をかけて習得していくしかなく、即戦力化には時間がかかっていました。
しかし、近年の市況変動のスピード感や複雑性を踏まえると、迅速かつ正確な情報に基づく提案が求められる場面が増えており、データを起点とした育成の重要性が高まっています。
estieのようなツールがあれば、経験の浅い社員であっても、自分なりの“鋭い切り口で仮説を立て”、それを多角的に“データで検証”することが可能になります。結果として、実践的なスキルの習得が早まり、組織全体の意思決定力が底上げされると感じています。
estie導入を決定した理由は何でしょうか?
他にないデータと拡張性
三井住友信託銀行では、不動産事業における成長の鍵を、仲介中心のビジネスから、自己投資やファンドのアレンジメントといったストック型のビジネスへと展開していくことに見出していました。会社からの期待も高まり、限られた人員でより多くの案件に迅速かつ正確に向き合っていくにはどうしたらよいか。これは、現場レベルではもちろん、経営的にも重要な課題となっていました。
その中で、私たちの直面している課題をestieに相談したところ、これまで自力では集めきれなかった情報も含めて、想定以上に幅広く情報を把握できることがわかり、「これならいける」と思えたのが導入のきっかけです。経験豊富な社員にとっては情報収集の強力な後押しに、新任者にとっては相場観や仮説構築・検証力を養うための実践的なツールになると確信しました。
正直なところ、他社の不動産関連サービスと比較して、estieは「手に入らない情報が得られること」と「使いやすさ」 という点で頭ひとつ抜けていたという印象です。情報量が圧倒的に多く、特に募集情報の収集精度が非常に高い。私たちにとって、通常のリサーチでは得られない情報が一括で取得できる点が魅力的でした。
また、estieのUI(ユーザーインターフェース)が直感的であり、誰でもすぐに使いこなせる点も大きな利点でした。新しいツールを導入すると、慣れるまでに時間がかかるのが一般的ですが、estieはすぐに現場で活用できました。
商業用不動産業界における事業者間で流通する取引データとの掛け合わせにより、複数の検証角度を持てたり、視覚的な分析機能が充実していたりと、検討の精度が格段に上がり「これがあれば、まさに私たちの課題を解消できる」と感じたことが、導入の大きな後押しになりました。
導入後に感じた変化について教えてください。
スピードと精度の向上、そしてDX戦略としての進化
不動産投資事業部における業務の変革は、単なるツールの導入にとどまりませんでした。estieの導入は、三井住友信託銀行のデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の一環として事実上組み込まれており、「意思決定プロセスの高度化をデジタルにより実現する取り組み」として高く評価されています。
一番の変化は、案件検討のスピードと正確性が飛躍的に向上したことです。以前は、PM会社様に頼んでデータを集め、表計算ソフトで分析して……という流れだったものが、今ではestieを開けばすぐに競合物件の情報を確認できるようになりました。
これまで一次検証の段階で時間を要していた案件についても、より迅速に対応できるようになりました。毎週の投資会議のたびに、estieのデータを活用した競合物件の分析をセットで提出するのが当たり前になっています。従来なら情報収集に時間を要しすぎるため見送らざるをえなかった案件も、今ではデータを一瞬で取得し、短時間で判断できるようになっています。その結果、年間の検討件数が140件近くにまで増加しただけでなく、実際の投資実行件数も目に見えて増加するなど、不動産投資事業部の成果にも直結しています。
案件を精査するプロセスのなかで、estieのサービスを使用することが業務フローに組み込まれるようになり、投資実行に至ったすべての案件でestieのデータを活用しています。また、実行案件だけでなく、過去にお断りした案件に関わるestieのデータも部内に蓄積されるため、お客さま対応の質も向上しました。しっかりとした根拠に基づき判断することで、お客さまからの信頼も厚くなり、新たな情報提供にも繋がるケースも増えています。
このように、estieの導入をきっかけに、データに基づく意思決定が組織全体のスタンダードとなりました。属人的な判断に依存していた従来の業務スタイルから脱却し、より再現性・透明性の高いプロセスへと進化していると感じています。
若手育成から提案力強化まで
データを活用した意思決定がより重要になってきている中で、経験の浅いメンバーでもestieのサービス利用によりデータを活用しやすくなった点も大きなメリットです。UIが直感的で、新しく入ったメンバーでもすぐに使いこなせるので、社内の知見を蓄積し、相場観を養うという点でも非常に役立っています。また、単に「データを見る」だけではなく、自分自身で仮説を立てて検証する習慣が生まれたことで、例えばトレンドから外れている案件があった際にも、「なぜこの賃料なのか」「どの仕様が影響しているのか」といった要因まで踏み込んで考察できるようになってきました。データを“受け取る”のではなく、“咀嚼して使いこなす”ことが、若手メンバーにも定着しつつあります。
さらに、アレンジメント業務においても以前は、投資性能の表示が中心でマーケット分析は簡単なCompsだけでお客さまに提案をしておりましたが、今ではestieのデータを活用した詳細な市場分析を提供できるようになり、より様々な観点から提案ができるようになりました。
J-REITの事例が調べられる点も助かっています。キャップレートの水準だけでなく、過去の賃料や稼働率のトレンドを把握することで、ダウンサイドリスクを評価する際に役立っています。過去のデータと比較することで、市況の変動に対する耐性を評価し、より慎重な投資判断が可能になりました。
今後、estieのサービスをどのように活用されますか?
「調べるツール」から「意思決定を後押しする検証ツール」へ
今後、三井住友信託銀行ではestieを単なる情報収集ツールとしてではなく、投資判断や戦略策定の検証ツールとしてさらに活用していく方針です。
不動産投資は、単なる物件の売買ではなく、いかに確度の高い戦略を描けるかが重要です。そのためには、過去の事例の蓄積や、精緻なデータ分析が欠かせません。estieのデータを活用すれば、単に「今このエリアの賃料はいくらか?」といった表面的な情報だけでなく、「なぜこの物件は高賃料でリーシングできているのか?」といった背景まで分析することができ、戦略構築の角度が格段に上がります。
人材育成の「平準化」へ
また、私たちはestieを「育成ツール」としても重視しています。不動産業界では、経験を積む中でしか得られない“相場観”や“見立ての力”が大切にされてきましたが、それにはどうしても時間がかかります。estieを使えば、自分の仮説を多様な切り口から検証することができ、短期間で市況を理解し、考察力を鍛えることができます。例えば、「このエリアで賃料が上昇しているのはなぜか?」という仮説に対し、築年数や駅距離などの条件で絞り込み、過去の賃料推移・競合物件のデータを確認するといった分析が可能です。
さらに、ポートフォリオごとの賃料・稼働率のトレンドも視覚的に把握できるため、チーム全体で共通の視点を持ちながら戦略を考えられるようになりました。
結果として、不動産未経験のメンバーでも市況感覚を早期にキャッチアップできるようになり、人材育成の平準化が着実に進んできていると感じています。今後も、このデータドリブンな育成の仕組みを一層推進し、組織としての底上げを図っていきたいと考えています。
両社で今後描いている未来とは?
意思決定の質を支える“共創関係”へ
三井住友信託銀行様がestieを活用し始めて以降、不動産投資の判断スピードや精度は高まり、経験の浅いメンバーの育成や、関係各社との対話の質の向上にも貢献してきました。
estieとしても、三井住友信託銀行様のような高度な分析力・実行力を持つプレイヤーと日々の活用を通じて接点を持てることは、サービス進化の大きな糧となっています。
両社が共に見据えているのは、「データを活用することで、不動産投資の意思決定をより高度化し、社会的な資金循環を加速させる」未来です。
市場に流通する情報が複雑化する中で、estieは単なるツールの提供にとどまらず意思決定を後押しする戦略パートナーとして、現場のスピード感と戦略的な判断力を引き続き支援してまいります。