新宿オフィス事情【AI予測】今後の賃料は下がる!?
- エリア別オフィス事情
- 新宿区
- 2019/11/20
新宿のオフィス事情と今後の動向、新宿で働くメリットとは?
世界の駅の乗降客数ランキングをご覧になったことはあるでしょうか?
ご存知の方も多いかもしれませんが、実は上記の乗降客数ランキングでは2019年時点で第1位から第23位までのすべてを日本の駅が占めています。
実際問題、日本のJR・地下鉄などの鉄道の発達ぶりは先進国を見ても異常なほどで、年間で実に延べ250億人もの乗降客数といわれています。
通勤ラッシュ時の電車の混雑具合は社会問題視されるほどで、その機能が停止した際の経済損失は理論上では年間で3,000億円以上とも言われる日本の鉄道ですが、その中でも最も利用客が多いのが新宿駅です。
順位 | 乗降客数 | 駅名 | 区分 | 事業者名 |
---|---|---|---|---|
1 | 1,578,732 | 新宿 | JR | 東日本旅客鉄道 |
2 | 1,168,717 | 渋谷 | 民営 | 東急電鉄 |
3 | 1,133,988 | 池袋 | JR | 東日本旅客鉄道 |
4 | 942,712 | 新宿 | 民営 | 京王電鉄 |
5 | 934,330 | 東京 | JR | 東日本旅客鉄道 |
6 | 867,274 | 大阪 | JR | 西日本旅客鉄道 |
7 | 847,302 | 横浜 | JR | 東日本旅客鉄道 |
8 | 766,884 | 品川 | JR | 東日本旅客鉄道 |
9 | 741,712 | 渋谷 | JR | 東日本旅客鉄道 |
10 | 575,043 | 池袋 | 民営 | 東京地下鉄 |
(2019年 令和1年度)
そのほかにも多くの長距離バスのターミナルである「バスタ新宿」などを擁し、日本各地と東京を結ぶハブである新宿ですが、その周りに目をやると、東京都庁やJR東日本、野村不動産やSOMPOホールディングスなど名だたる日経企業や公的機関が本社を構えるオフィス街であることにも気づかされます。
今回はそんなインフラとビジネスの両面から日本経済で大きな役割を果たす新宿のオフィス事情について、そのオフィス街としての歴史を辿りながら、どのようなマーケットを構成しているか、どのような業種の企業が集まるのか、などといった視点から今後の動向までを解説したいと思います。
新宿のオフィス事情その①
オフィスを構えるなら地固まった土地に 新宿のオフィス街としての歴史
出典:https://paraft.jp/r000016001485
田舎町から摩天楼のオフィス街へ 今でこそ日本一の乗降客数を誇る新宿駅を擁し、商業地としても、オフィス街としても、近年ではタワーマンションが立ち並ぶ高層住宅街としても注目を集める新宿駅ですが、駅前周辺エリアの発展は東京駅や品川駅よりは一歩遅れてのものでした。
新宿駅が建設された明治以降、当初は宿場町であった新宿ですが、鉄道路線の延伸や私鉄の乗り入れなど次々に鉄道事業が拡大されてゆき、一足先にターミナル駅として発展していた駅へのアクセスが容易になりました。
新宿が宿場町からターミナルへ生まれ変わるターニングポイントとなったのが日本初の近代水道の浄水場である「淀橋浄水場」の開業でした。東京の水道の発展を支えるエリアとして新宿はその知名度をどんどんと成長させていきました。
震災大国ワーカーの受け皿としてオフィス街へと生まれ変わる 新宿がオフィス街としてその産声を上げたのは1923年の関東大震災がきっかけといわれています。
それまで銀座や浅草などの繁華街を中心に発展してきた日本経済でしたが、いわゆる湾岸で地盤が弱かった地域に位置していた日本の繁華街はあっけなく崩壊し、日本の景気が一気に落ち込んだために都心から生活拠点を移す人々が多くいました。
そういった人々が新たな拠点としてポテンシャルを見出したのがまだ発展途上にあった新宿でした。
立地的な地盤の強さから震災の被害が少なかったことや、都心のターミナル駅からのアクセスの容易さを買われ、新宿は行き場を失った東京都民の新たな発展の拠点としてその産声を上げました。
︎新宿副都心計画、バブルを経て現在の姿へ。
関東大震災以後、大量の就業人口の流入によりオフィス街としての需要を爆発的に高めていった新宿は、その発展の礎となった淀橋浄水場の跡地を再開発としてそのプレゼンスをさらに高めていくこととなります。
「新宿副都心計画」の幕開けです。 この再開発計画で建設された京王プラザホテルを皮切りに、住友ビル、三井ビル、東京都庁舎など空にも手が届くかのような高層ビルが誕生しました。
出典:https://www.keioplaza.co.jp/
この1960年代後期のオフィス床の大量供給によって、新宿はオフィス街としての地位をゆるぎないものにしていきました。
近年では西新宿エリアの朝日生命本社ビル跡地に建設された東京モード学園の新宿コクーンタワーは、オフィス街としての新宿のランドマーク的なビルであるといえます。
出典:https://news.mynavi.jp/article/20130929-k02/
新宿のオフィス事情②
“再開発事業のはしり”となった新宿のオフィス
今でこそ「新宿といえばコンクリートジャングル」との名をつけられるほどオフィス街としてそのブランド力は確かなもので、そのオフィス事情は不動産マーケットにも大きな影響を及ぼす待ちとなりましたが、新宿がオフィス街としてその地位を揺るぎないものにしたのは紛れもなく「再開発」であると言えるでしょう。
︎バブル崩壊からの再興
関東大震災以後、バブル期まで成長の一途を辿った新宿ですが、バブルの崩壊とともにその成長は一度停滞を迎えました。
事業規模を縮小するにあたり、多くの企業が従業員の解雇・新卒採用の抑制を行ったために、バブル期中「土地神話」などとと呼ばれる不動産の地価が不動のものであるかのように考えられる概念すら存在し坪あたり3〜4万円程度の賃料が取れて当たり前だった賃貸オフィス床の需要は、徐々に沈静化していきました。
新宿のオフィス事情も例に漏れず、オフィス床需要の縮小によ賃料相場もひどく落ち込みました。
しかしその後新宿のオフィスを再び立ち直らせたのが国内過去最大の再開発事業といわれる西新宿の再開発でした。
1990年代に始まったこの再開発では、西新宿のシンボル的高層ビルの新宿パークタワーや、新宿に商業や住居といったオフィス以外の新たな顔を作った新宿アイランドタワーなどが次々に竣工しました。当時の新宿のオフィスビルには現在の渋谷のように、大手のIT企業や外資系金融機関などが入居し、「新宿といえばオフィス街」というイメージが揺るぎないものとなりました。
︎右肩上がりに見える新宿のオフィスニーズ
2019年現在、新宿では「西新宿6丁目計画」や「新宿5丁目北地区防災街区整備事業」、「新宿TOKYU MILANO 再開発計画」など、発表されているものだけでも、10近い大規模オフィスの開発が予定されています。
エリア全体での空室率はピーク時の2012年時点での11%から緩やかに加工し、2017年以降は1%台まで低下、推移していることからその需要は堅調であるといえます。オフィス賃料の平均も右肩上がりに推移しており、今後もオフィス街としての成長の余地を感じさせられます。
一方で新宿のオフィスの大きな特徴として、丸の内や日本橋のような国内のその他のトップオフィス街と比較すると、新宿は非常に市況や景気に左右されやすい脆弱性も持ち合わせているということが見て取れます。
市況がダイレクトにマーケットへ影響
その理由は、新宿にオフィスを構える企業の多くがIT企業やSIer、人材系などといった業界自体が市況の影響を受けやすいかつ、工場等のインフラを持たないがためにビジネス拠点の移転におけるフットワークが比較的軽いオフィステナントが多く存在するためです。
新宿のオフィスマーケットのメジャーであるそういった企業たちの賃料負担力は景気によって激しく上下するため、新宿のオフィスマーケットはそのスピード感をもって 賃料見直しなどによる市場調整を行わなければ、外部エリアへのテナント流出は免れません。
加えて再開発でのマーケット再編が早期に行われてきた新宿では、渋谷や丸の内に比べビル自体の低スペック化は火を見るより明らかなように思えます。
今後計画されている上記のような再開発計画では、そういったハード面の刷新に加え、新たな業界の企業誘致などによる市況変動に対する耐久性の向上も期待できるものであることが望ましいように思われます。
新宿のオフィス事情③
今後の新宿の賃料は下降路線
上記の通り2019年では「住友不動産西新宿6丁目プロジェクト」(延べ床面積約1万8千坪)を含む5棟の大規模オフィスの竣工があり、テナントの動きがより活性化されることが予想される新宿のオフィス時事情ですが、新宿は各物件同士の賃料競争に目をやると、その高いニーズとは裏腹に、オフィス床の供給過多感を感じることができます。
主要マーケットでは賃料目線は低い東京の主要マーケット(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区)の中では、新宿の平均賃料は坪あたり約18,000円と、主要マーケット全体の平均値坪あたり21,000円に対して最も低い数値です。
新宿エリア内だけで見ても、オフィスの募集賃料は最も高いもので西新宿エリアの高層オフィスで坪あたり約20,000〜24,000円と、同様のエリア内超一等地で坪あたり50,000円台を記録するような丸の内エリア(千代田区)や渋谷(渋谷区)に比べ安価であることがわかります。
これは明らかに近年の連続的再開発による影響であり、物件数が増えすぎたために賃料競争が激しくなっていることをあらわしています。
︎新たな姿に生まれ変わる新宿
マーケット内でのオフィス床の割合がやや飽和状況となっている新宿ですが、2019年以降も西新宿から新宿駅前に徐々に重心をずらしながら大規模な再開発計画が目白押しです。
そんな今後の新宿の不動産マーケット動向を見通すにあたり、重要な方向性となってくるのが「他エリアとの差別化」であると予測されます。
新宿にオフィスを構えるメリットは職住近接
オフィス用途先行で不動産としての競争力を高めてきた新宿ですが、その中心地から少し目を引くと、日本一の高さを誇るタワーマンションである「ザ・パークハウス 西新宿タワー60」をはじめとする住宅エリアの存在が目に入ります。
出典:https://www.mec-h.com/lp/selection/M00946
上記のような再開発計画の中でもオフィスだけではなく、1000戸規模での住宅供給が予定されている計画も存在し、今後新宿は住宅エリアとしてもそのプレゼンスを高めていくことは想像に難くなく、さらに千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区の都心5区と呼ばれるエリアでは、主要駅至近の立地にこういった大規模な住宅供給のあるエリアは多くなく、今後新宿は職住近接を求めるニーズに対して非代替性の高いエリアとなることが予想されます。
今後の新宿のオフィス事情の行く末
街全体での生まれ変わりを目指す新宿では、賃料マーケットの状況を鑑みても単純なオフィス床の供給ではエリア全体でのバリューアップにはつながらないように思えます。
今後新宿がオフィスを含めた不動産マーケットでさらなる存在感を放つためには、上記で述べた新宿のオフィスの特徴・ウィークポイントの刷新に加え、住宅用途の整備などによる他エリアとの差別化が必須事項であり、唯一無二の魅力となるのではないでしょうか。
おわりに
いかがでしたでしょうか。新宿はオフィス・住居それぞれの開発予定もあり、今後どのような人が集まってくるかによって街の雰囲気が変わるタイミングかと思います。どのような街になっていくか楽しみですね。
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