オフィスの移転を考える企業は多い?移転する時に押さえたい4つのポイント
- トレンド
- 2021/03/01
目次
コロナ禍で地方への移転を考える企業が増えている
コロナ禍で、社員のリモートワークが急激に促進された中、地方移転を考える企業が増えています。その中でも特に、東京などの都市部へ一極集中していた本社機能の一部を地方移転することが主な動きとなっています。
働き方改革の一環としてのオフィス移転
政府が主導して行われてきた働き方改革では、働く人1人1人が自分に合った働き方を選択することができ、それによって日本全体の良い将来へと繋がることを目指すものです。
コロナ禍で、大手人材派遣会社が、働き方改革の一環として、本社機能の一部を地方へ移すというニュースがありました。働き方に多様性をもたらすためにも、こうしたオフィス移転を計画する企業が増えています。
もちろん、オフィス移転によって、利益や恩恵を受けることができるのは、従業員などの個人だけではありません。企業も恩恵を受けることができるからこそ、オフィスを移転しています。
企業がオフィス移転を考える理由4つ
オフィス移転を考えるに至る理由は何でしょうか。最たる目的は、企業にとってメリットがあるからこそのオフィス移転であるということです。
オフィスの立地は、顧客とやり取りをしやすいか、従業員が働きやすいかなどを総合的に考慮し、経営戦略として行うことが必要です。本項では、企業がオフィス移転を考える4つの理由について解説します。
1:企業のブランドイメージ向上のため
オフィス移転によって、企業のブランドイメージを向上することもできます。たとえば、知名度の高い地域への移転や、逆に、地方再生のための企業移転など、話題性のあるオフィスの移転に意味を持たせることによって、企業のブランドイメージを高めることが可能です。
2:従業員が増えてフロアが狭くなったため
企業が成長し、従業員が増えてくると、既存のフロアが手狭になります。従業員が増えてフロアが狭くなった場合も、オフィス移転を考えるきっかけになります。
より広いフロアへの移転には、同じビル内でより広いフロアへ移ったり、フロア自体を拡張するという選択肢もあるでしょう。また、全く違うロケーションでより広いフロアに移転することもあります。
3:業績の悪化
企業の業績が悪化し、今までの賃料よりも安い賃料のオフィスへの移転や、フロアの縮小移転をするというのも1つの理由です。オフィスの賃料は、大きな固定費であるため、業績の悪化度合いによっては削減しなければならなくなり、オフィスの移転を検討する理由になり得ます。
また、現時点では業績の悪化が起きていなくても、業績が下がる見通しがあれば、未然に資金繰りの悪化を防ぐために、賃料の安いオフィスへ移転するというケースもあります。
4:利便性の向上
駅からオフィスまでのアクセスが悪い場合、よく行き来のあるメインの顧客のロケーションと企業のオフィスとが離れていて往来が容易ではない場合があります。こうした場合、利便性の向上を見直すためにオフィスの移転を考えるのも理由の1つです。
旧オフィスの退去までの流れ
旧オフィスを退去するまでのスケジュールは、少なくとも半年の期間が必要です。退去・解約の予告は、退去日の6ヶ月前となっている契約が多いためです。同時に、新オフィスを探し、賃貸契約を締結します。
また、オフィスの退去日が決まったら、新オフィスへの入居日から逆算して、原状回復の工事や、新オフィスへの引越しについても余裕を持ってスケジュールを立てなければなりません。
新オフィスへの移転の流れ
新オフィスを探し、賃貸契約を締結すると、入居日が明確になります。新しいオフィスの入居日とは、引越しをする日ではありません。その日から、契約したスペースが使用できるという日です。
入居日以降は、引越しの日までに、入居工事を手配して実施する必要があります。入居工事は、新オフィスが居抜きの物件なのか、スケルトン物件なのかによっても期間や費用が大きく異なります。引越し日までに間に合うように、業者の手配や工期の確認を行いましょう。
企業がオフィスを移転するときに押さえたい4つのポイント
オフィス移転では、引越し日に間に合わない、大幅に当初の予算を超えてしまうといった失敗がないようにしなければなりません。そうならないためにも、オフィスを移転するときに事前に確認しておくと良い4つのポイントを紹介します。
1:現状のオフィスの問題点を把握する
移転先のオフィスで同じ問題点が生じないように、現状のオフィスでは何が問題点なのかを把握します。オフィス移転の主な理由の他にも、個々の従業員や利用者が気付いている細かな問題点もあるでしょう。
エレベーターの停まる階数が分かりにくく顧客が迷ってしまう、ビルの入り口がわかりにくい、共有部分の清掃が行き届いていないなど、従業員からのヒアリングで、新たなオフィスを選ぶ際の参考にするのも良いでしょう。
2:旧オフィスの退去から新オフィス移転までにかかる期間
旧オフィスの退去から、新オフィスに完全に移転し、営業を開始できるようになるまでの期間は、最短に抑える必要があります。旧オフィスの退去日から逆算し、移転日までに行わなければならないのは、主に旧オフィスの原状回復工事と新オフィスの入居工事です。
移転日までに新オフィスの入居工事を、移転日から旧オフィスの退去日までに原状回復工事が完了するようにスケジュールを立て、業者や関係各所に手配や通達を行いましょう。
3:移転にかかる費用
移転にかかる費用は、旧オフィスの退去日までの賃料、原状回復工事費用、引越しに関する費用、什器の廃棄・購入費用、新オフィスの契約時に必要な費用、新オフィスの入居工事費用、新オフィスの賃料が主な費用です。
その他にも、引越しに予想外の追加費用がかかったり、設計事務所に依頼する費用がかかったりといった費用が発生する場合もあります。逆に、引越し費用を抑えたり、新オフィスに居抜きの物件を選ぶことで入居工事費用を抑えることも可能です。
4:移転に関する手続き
移転に関する手続きは、移転後速やかに行う必要があります。管轄の法務局に移転登記申請書を、その他にも税務署や社会保険事務所、労働基準監督署、ハローワーク、消防署への各種書類の提出を行います。また、郵便局への転送手続きも忘れずに行いましょう。
企業が地方へオフィスを移転するメリット4つ
企業がオフィスを移転する際に、地方へ移転するケースも増えています。利便性も高く、人・モノ・経済が一極集中している都市部から、敢えて移転先に地方を選ぶメリットは何かについて解説します。
1:コストカットができる
一般的には、都市部よりも地方の方がオフィスの賃料が安く済みます。また、都市圏で人材を雇うよりも、地方のほうが生活費がかからないことが多いので、手当が少なく済む場合もあります。
2:法人事業税の免除など税制上の減額措置がある
本社機能を地方へ移転するなどした企業に対して、地方拠点強化税制による法人税の減税措置があります。この場合の法人税の減税措置は、オフィス減税と雇用促進税制の2つで構成されています。
オフィス減税は、地方で本社機能を持つ建物を取得した場合に、法人税、または、所得税を減税するものです。
一方、雇用促進税制は、本社を地方移転後に、雇用を増やした割合や人数に応じて、法人税、または、所得税を減税するものです。これらの税制上の減額措置は、企業が地方にオフィスを移転する理由に足る魅力となっています。
自治体によって制度が異なるため、該当する自治体の制度を確認しましょう。
出典:地方拠点強化税制|内閣府地方創生推進事務局
参照:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/tiikisaisei/sakusei.html
3:地域への貢献
地方へ企業がオフィスを移転することによって、移転先の地域では、税収入の増加や人口増加が見込めるでしょう。また、それに伴って、学校や保育園、インフラ等の整備が行われ地域住民にもその恩恵が還元されます。
それ以外にも、地元企業とのビジネスチャンスや、地域の雇用増加、地元小売店などの活性化など、企業を受け入れる地域側にも、様々なメリットがあります。
4:ワークライフバランスの向上
働き方改革によって、様々な状況の人が働く社会において、1人1人のニーズに合ったワークライフバランスが重視されています。オフィスを地方に移転することによって、ワークライフバランスの選択肢を増やせるというのも移転のメリットの1つです。
都市部ではマイホームも希望通りの地域ではなかなか購入できない、子供の保育園と職場が遠く大変である、毎日通勤電車が混み過ぎているといった、都市部ならではの悩みも多く存在します。
地方へ移転することにより、こうした都市部ならではのワークライフバランスのとりづらさを解消することも期待されています。
企業が地方へオフィスを移転するデメリット5つ
企業が地方へオフィスを移転するメリットがある一方で、デメリットも存在します。企業が地方へ移転する際には、デメリットも把握した上で、それを上回るメリットがなければ移転に踏み切りにくいものです。本項では、地方へ移転する際の5つのデメリットについて解説します。
1:取引先が都内にあるため、遠くなる
都心部には、企業が集中しているため、取引先も集中しているといえます。ですから、企業がオフィスを地方へ移転した場合、都心部に集中している取引先から遠くなってしまうというデメリットがあります。
現在は、インターネットや電話網などの連絡手段が普及していますが、やはり商談や密な連絡など、取引先や顧客の近くにいる必要があるようなケースでは、都内や都心部を離れることがデメリットなるでしょう。
2:インフラの整備状況に左右される
都心部では、高水準なインフラが整備されています。交通1つをとっても、電車は縦横無尽に隅々まで走り、バスやタクシーも乗りやすく、どこへでも足が運びやすいようになっています。一方、地方では、車での移動が主な移動手段という地域も少なくありません。
また、都心部では、高速で高品質なインターネット環境が当然のようになっていますが、地方によっては、満足のいくものではない場合もあります。これから改善・整備されていく部分もあるということを事前に心得ておかねばなりません。
3:採用のハードルが高くなる
企業や取引先が都市部に集中しているため、人口も都市部に集中しているのが現状です。人口が多い分、人材募集時には、多くの人が集まりやすいというのも、都市部にオフィスがあるメリットです。
一方、オフィスを地方へ移転した後に、業績が良くなって雇用を増やしたい場合、都心部にオフィスがあった際と同じように採用ができない場合があります。
移転後の採用計画を見据え、オフィスの立地を決める際には、オフィス移転をした地域の人口や、周辺地域からのアクセス等を総合的に判断する必要があります。
4:移転に関する手続きにコストと手間がかかる
都心部は、企業や人口が集中しているだけではありません。こうした企業や人口に対応するため、官庁や省庁などの官公庁も集中しています。
移転に関する手続きも、また、その後の企業を運営していく上でも、こういった行政や地方自治体への届け出や申請などは多いものですので、届け出先である官公庁などが集中しているのはコストも手間も省けて便利です。
それ以外にも、都心部では、移転に関する手続きに必要な準備のために業者を手配する場合なども、複数の業者を見付けやすいのも利点です。一方、地方では、都心部と同じような感覚ではできない場合があることを考慮しておく必要があります。
5:会議に参加しにくくなる
新入社員研修や、実際に集まって行う会議などには、オフィスが地方にある場合、参加しにくくなるというデメリットもあります。現在は、オンライン会議も普及していますが、すべてを完全にオンライン会議だけで終結できるという状態には至っていません。
企業のオフィス移転で職場環境を見直してみよう
オフィスの移転をする際には、オフィス移転をする理由を明確にし、現状の問題点を洗い出した上で、どのような場所へ移転するのが最適かを判断することが重要です。
熟考の上で行われるオフィス移転では、企業にとっても従業員にとっても、メリットがあるものです。オフィス移転で職場の環境を見直してみましょう。