オフィスのデザイン性を崩さない防音方法6選|防音対策のメリット3選など紹介
- オフィス移転
- 2021/02/01
目次
オフィスの防音対策とは
働き方改革によるワークスタイルの変革が、オフィスデザインの変化をもたらしました。この変化は、意外なところに影響を与えています。オフィスにおける音の問題が、以前に増して際立つようになったのです。
オフィスの防音対策といえば、外からの騒音対策やオフィス内の機械音の音漏れ対策という、個々の音の問題でした。しかし現在では、トータルな音環境の改善が主題となっています。
オフィスの防音対策についてご紹介します。
音の種類を理解する
騒音とは、人が聞いて不快に感じる音の総称です。ところが、人が心地よいと感じる音か、不快に感じる音かは、個々人の主観的判断によります。
従って騒音規制法では、騒音の大きさを基準に規制を行っています。例えば、住居の良好な環境を保全しなければならない第1種区域では、特定工場・事業所は昼間では40~50dBの基準内とされています。
環境工学における騒音は、定常騒音(空調機の運転音など)、間欠騒音(給水ポンプの運転音など),衝撃騒音(人が飛び跳ねるときの音など)、変動騒音(自動車による交通騒音など)の4種類に分類されます。
また、音が伝わるしくみから分類すると、大きく分けて3種類があります。床や壁などを伝ってくる音(個体伝搬音)、空気を伝ってくる音(空気伝搬音)、そしてこの両方のミックス型です。
オフィスの騒音対策を行う前に、どのような音の種類の騒音なのかを正確に把握する必要があります。
オフィスの音が漏れる原因3選
オフィス音が漏れる種類には、ドアや窓などの隙間や開口部からの音漏れ、壁などの構造物を通過する音漏れ、天井・床・柱などの構造物を伝搬する音漏れの3種類があります。
確実な防音対策を行うには、音漏れの原因を的確に掴む必要があります。その原因に合った施工をしないで中途半端な対策をしてしまうと、防音工事に費用が掛かるばかりで効果が出ないという事態を招いてしまいます。
ではどのような音漏れの原因があるのでしょうか。
1:隙間から漏れる
音が伝わるしくみで説明したとおり、音は隙間から漏れてきます。オフィスのドアの隙間、OAフロアの床下、天井裏、開口部分などの隙間を通して音が外に漏れます。
これらの騒音は空気伝搬音です。空気が流れる経路は実に様々です。意外と気付かない隙間に、ハイパーティションの欄間、空調設備(エアコンや換気扇)や換気口(通気口)などがあります。
2:遮音素材の密度・重さ
遮音とは、音を壁やパーティションなどでブロックすることです。音を撥ねかえしてしまうことで吸音とは異なります。
遮音材には、クロス、石膏ボード、鉛、遮音シートなどがあり、これらを組み合わせたものもあります。遮音材の防音効果は、素材の面密度が高いほどよくなります。この面密度とは、素材材料の1㎡当りの重さ(kg)のことをいいます。
クロスは吸音効果はありますが、低密度なので大きな遮音効果は期待できません。
3:形状や材質によって共鳴・振動しやすい
金属製のボードは遮音効果がありますが、ホードとボードの間の間隔が狭いと音が伝わってしまいます。専門用語でこの現象を「低音域共鳴透過」といいます。
音は振動です。物体には、その形状や材質によって決まる固有振動があります。その物体の固有振動の周波数に近い振動が加わると、振動が大きくなります。
木質系ボードは表面のディテールや材質が、金属系ボードに比べると均一ではないため、共鳴透過現象はやや低めです。
オフィスのデザイン性を崩さない防音方法6選
会議室、応接室、受付など、オフィスでは様々な場所で騒音が発生します。コロナ対策で面談を避けるとか、在宅勤務が進行している現在、テレワーク騒音も以前に増して酷くなっています。
防音対策が望まれますが、すべてのスペースを完全に仕切って防音室のようにしてしまうと、オープンオフィスのイメージが壊れてしまいます。
オフィスのデザイン性を崩さない防音の方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
1:床に防音カーペットを敷く
オフィスの床に防音カーペットを敷くだけで、階下に響く音を緩和することができます。人が跳びはねる音や靴音などは、大幅に軽減することができます。
防音カーペットは集合住宅でも活躍していますので、馴染みがある防音方法でしょう。
しかし音は床面に当って跳ね返るよりも、壁面や天井からの跳ね返りの方が増幅されます。会議室での声が執務スペースに音漏れする場合に、床に防音カーペットを敷いても余り効果はありません。
2:ドア下や壁下の隙間を埋める
なぜか密室空間なのに音漏れがするという場合があります。音が漏れる箇所の代表的なものは、ドア下や壁下の隙間です。
ドアは開閉しやすいように軽い素材で作られていることが多く、また隙間も出来やすいものです。この隙間からの空気伝搬音が騒音となります。
ドア下や壁下の隙間だけではなく、天井との隙間も音漏れの原因になります。欄間があるパーティションで仕切っている場合には、そこから確実に音は漏れてきます。
3:吸音材を用いたパーティションを設置
一般的にパーティションは、空間を間仕切りしたり、人の視線を遮ったりする目的で使われています。吸音材を用いたパーティションは、「音を吸う」機能も兼ね備えた間仕切りです。
医院の診察室に使われているパーティションには、吸音材が使われているものも多く、患者の診察内容や個人情報の音漏れによる外部漏洩を防ぐ目的があります。
吸音パーティションを使うと、反射・吸音の音場を調整するだけで、音場の改善が期待できます。
4:サウンドマスキングシステムの導入
オフィスが静かになり過ぎると、それまでは気にならなかった小さな音や会話の声が耳障りになることがあります。この現象を「逆騒音」といいます。
逆騒音環境下で、音によって音を抑える方法がサウンドマスキングです。騒音の周波数に近いか低い周波数の音を流すことで、騒音は聞こえなくなります。
この現象を利用し、エアコンの音のような音をわざと流して、周囲の音を聞こえなくなるシステムがサウンドマスキングシステムです。
5:窓を二重窓(内窓)で対応
窓を二重窓(内窓)にすることで遮音効果が向上します。
その理由は、従来の窓と新しく取りつけた内窓の間の空気層を音が反復することにより、音の透過を抑えることができるからです。
オフィスビルの窓枠は余裕がなく、内窓を取り付けるスペースがない場合には、ふかし窓枠(窓枠を延長した新しい窓枠)を作る方法があります。
6:壁に吸音パネルの設置
吸音パネルは、音を吸収するパネルのことです。吸収といっても、スポンジで水を吸い取るように材料の中に蓄えるわけではありません。音を減衰する仕組みです。
吸音パネルは音を遮断はしませんが、オフィス内の過度な反響音を減衰することで防音効果があります。
吸音パネルをどの位置に貼ればよいか、貼る枚数は何枚かなどは、どの反響音を減衰させたいのかにより変わります。また目的によって設置方法や使い方なども異なります。
音の伝わり方を軽減する防音方法4選
オフィスでの音の伝わり方を軽減する方法には、大きく分けて2種類あります。
第1は音漏れを防ぐやり方です。オフィスの会話の情報機密を保全する場合、アメリカではABCルールと呼ばれるものがあります。「吸音(Absorb)」「遮音(Block)」「サウンドマスク(Cover-up)」の頭文字を取ったものです。
第2は音に対して作用するやり方です。音は振動ですから、振動そのものを絶縁する「防振」と、振動を制御する「制振」の2つです。ここでは、「吸音」、「遮音」、「防振」、「制振」についてご紹介します。
1:吸音
吸音とは、音の振動エネルギーが壁面などを通過するときに、熱エネルギーに変換されることで、音の振動が弱まる現象をいいます。
この減衰メカニズムは複雑なもので、材質や音の周波数域によって異なります。
多孔質吸音材を例にすると、音が吸音材に入り込んで拡散し、その空気振動が気泡に伝わります。気泡の面では粘性摩擦が生じ、音エネルギーの一部が熱エネルギーに変換されて、反射音が小さくなります。これを吸音といいます。
2:遮音
遮音とは、空気中を伝わってくる音を壁やパーティションなどで跳ね返してシャットアウトして、反対側(背面)への音の透過を防ぐことです。遮音材の単位面積当たりの質量(面密度)が大きいほど透過損失が高くなり、遮音効果が高まります。
しかし、材料の厚さを2倍にしても遮音性能が倍になるかといえば,そうではありません。透過損失の関係を TL0(dB)、周波数をf(Hz)、面密度をm(kg/m2)で示すと、TL0=20×log10(f・m)-42.5(dB) で表せます。
この関係式から面密度を2倍にした場合を計算すると、遮音性能は約5~6dB程度しか増えないことがわかります。
3:防振
防振とは振動の伝達を低減する方法です。振動そのものを減少させることではなく、発生した振動を周辺設備への伝達を防ぐことです。
空気伝搬音は壁やパネルを通過するたびに減衰しますが、固体伝搬音は壁や天井などの構造物を振動させて音を伝搬するため、大きく減衰することなく離れた場所まで騒音が伝わることがあります。
集合住宅の騒音トラブルで、騒音発生源が隣ではなく、少し離れた居住区画であったという例もあります。
4:制振
制振とは、振動エネルギーを熱エネルギーに変換して発散させて振動を抑制し、減衰させることです。
音の振動を低減するには防振が有効ですが、実際の使用条件では防振材の設置ができない場合があります。この場合に固体の振動で伝わる固体音を制振による防音を行います。
具体的には、給排水管を通して伝わる振動に対し、ゴムや布地などの減衰性と弾性を併せ持つ材料(粘弾性体)で音源を包み、周りの壁に伝わらないようにします。
オフィスの防音を優先的に行うべき場所3選
防音対策が必要だと感じていても、費用面からすべてのスペースに施工することは難しい場合もあるでしょう。では、どのようなスペースを優先して防音性を上げる必要があるのでしょうか。
それを考える際のポイントは、防音工事を行うことにより「生産性を上げるためのオフィス環境の改善につながること」、「秘密情報の保全につながること」の2点です。
この観点から、優先的に防音対策を行うべき3つのスペースを挙げてみました。
1:応接室
会社にとって応接室は、建物のファサードのようなもので、目立つ場所です。来客者に不快な思いをさせないという配慮は不可欠です。
執務スペースでの会話や騒音が応接室に流れ込んでしまうと、気になって商談に集中できないこともあり、マイナスのイメージを与えてしまいます。逆に応接室での会話が外に漏れると、来客者の顧客情報保護の観点から思わしくありません。
応接室への防音対策は欠かせないでしょう。
2:社長室
社長室には、様々な重要案件が持ち込まれます。会社の秘密事項について話されることも多いでしょう。社長室内の声が外に漏れて、企業の機密漏洩になってしまう場合もあります。
経営陣の話が執務スペースで漏れ聞こえるようになると、従業員も集中して仕事に取り組めなくなってしまいます。社長室は、セキュリティ対策を含めて、防音対策を優先的に行うべき場所です。
3:会議室
会議室では、重要な会議が行われます。社長室と同様に情報漏洩を防ぐことが大切で、会議の内容が漏れてしまう事態は避けなければなりません。
一般的に、会議中の声は普段の会話より大きくなります。執務スペースと会議室が接近していて音漏れが酷い場合は、従業員の集中力が低下してしまいます。またテレワークでは受話器やマイクが周囲の音を雑音として拾ってしまいます。
会議室は、真っ先に防音工事を行う場所でしょう。
オフィスの防音対策のメリット3選
防音対策は、快適な空間やオフィス環境を整えるために必要であるということは、充分にご理解いただけたことでしょう。
防音対策は、環境や工事を行う場所によって費用に大きな違いがありますが、相応の投資が必要となります。投資に見合ったリターンがあるのかは、経営者にとっては重要な課題となります。
では、防音対策を行うことで、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは3つのメリットについてご紹介します。
1:機密情報漏洩のリスクを回避できる
社長室や会議室での会話には、企業の機密情報が含まれていることがあります。また会話の当事者が機密情報とは認識していないような通常の会話が、実は外部者にとって十分に役に立つ企業情報であるというケースがあります。
防音対策をとることによって、音漏れによる企業の機密情報の漏洩によるリスクを回避することができます。
防音工事単体ではなく、セキュリティ対策を含めた対策を取ることが肝要です。
2:集中力の維持
快適なオフィス環境は、騒音によって集中力を妨げられる心配を少なくすることができます。
これは防音対策を施した会議室のなかにいる人のみならず、会議室の外の執務スペースにいる人に対しても、同様のメリットをもたらします。
オフィス環境の場合、会話によって集中力が遮られることは避けるべきポイントです。自分の執務には関係ない会話の声が漏れ聞こえる状態は改善すべきです。
3:プライバシーの保護
プライバシー保護が必要な環境があります。
「3:吸音材を用いたパーティションを設置」で紹介したように、医院の診察室では患者の診察内容や個人情報が音漏れによる外部漏洩を防止する必要があります。
銀行などの金融機関や保険会社では、顧客プライバシー保護から防音ブースを設けるなど、サウンドマスキングを行うなどの対策を実施していることが多いです。
オフィスの防音対策を理解して働きやすい環境をつくろう
オフィス環境の整備は、働く人たちの能率性を向上させることができます。オフィス環境の整備というと、オフィスレイアウトやデザイン性に目が行きがちですが、防音対策も重要な課題です。
応接室や会議室の防音対策は、外部からの信頼にもつながります。オフィスの防音対策を見直しして、安全・安心な職場環境を構築しましょう。