事務所の移転を効率的に進める手順13選|移転時に必要な手続きも紹介
- ハウツー
- 2021/03/01
事務所の移転とは
事務所の移転とは会社の引越しを意味しますが、会社の引越しはなぜ必要なのでしょうか。
事務所移転の理由には、従業員増加や働き方の変革によるオフィスの拡大や縮小などが挙げられますが、会社それぞれで移転の理由が異なります。そのため、会社それぞれで移転や検討するタイミングも異なります。
自社の事務所に課題が出てきたとき、移転を検討してみましょう。
移転にかかる期間
事務所の移転にはどれくらいの期間を要するのでしょうか。
事務所移転の期間は、賃貸借契約書に書かれている解約予告期間に合わせるようにします。一般的に解約通知は6ヶ月前となっていることが多く、事務所の移転もそれに合わせて6ヶ月で行われます。
ただし、スモールオフィスなどの場合は3ヶ月前になっていることもあるので、契約書をしっかり確認してから移転の期間を決めましょう。
事務所の移転を効率的に進める手順13選
事務所の移転を検討し始めたら、どのように進めていけばいいのかも検討しなければなりません。
いつ・誰が・どのようにタスクを進めていくのか、どのような順番で行っていくのかなど手順を踏むことで、効率的に移転準備を進められます。
では、どのような手順で進めていけばいいのでしょうか。事務所移転を効率的に進める手順13選を見ていきましょう。
1:事務所を移転する目的を明らかにする
手順1は、事務所を移転する目的を明らかにすることです。
事務所を移転する理由は企業それぞれで異なります。そのため、どのような事務所にしたいのか、どこに移転を考えているのかもそれぞれで変わります。
移転の目的を明確にすることは今後の移転の準備にも深く関わってくるため、しっかりと課題を洗い出し、実現したい内容を確定しましょう。
2:オフィス専門の仲介業者の選定
手順2はオフィス専門の仲介業者の選定です。
新オフィスを探す際、どのような業者に依頼すればいいのか悩むところですが、仲介業者によって得意とする分野は違います。都心に移転を考えているなら、都心のオフィス賃貸物件に特化した仲介業者に依頼するなど、自社の条件に合った物件に特化した業者を選ぶようにします。
この仲介業者の選定は、事務所移転の目的を明確にしたらすぐに始めましょう。
3:新しい事務所の物件を探す
手順3は、新しい事務所の物件を探すことです。
新事務所を探す際は、立地や取引先へのアクセス、通勤時間などの周辺環境や設備、入居コストなどを確認しながら候補を絞り、その中から最終的に自社の移転目的と合った物件を見つけます。
新事務所の物件探しから契約に至るまでは、移転計画を始めた最初の2ヶ月間のうちに終わらせるようにしておきましょう。
4:原状回復業者の選定・依頼
手順4は、原状回復業者の選定と依頼をすることです。現在の事務所を退去するときは、原状回復の工事を行って元の状態に戻す必要があります。
原状回復工事の業者を探す際にはまず指定業者の有無を確認し、指定業者がない場合は自社で業者を選定します。原状回復は解約する日に終わらせて引き渡しをしなければならないため、移転の2ヶ月前には依頼し、引越し後1ヶ月以内に工事完了するようにしましょう。
5:新事務所のレイアウトプランニング
手順5は、新事務所のレイアウトプランニングをすることです。
新事務所のレイアウトプランニングでは、各部署で必要なスペースを検討し、執務室以外のスペースを配置しながら、より具体的なレイアウトを作成します。最後に、レイアウトプランが移転の目的に沿ったものになっているのかを確認しましょう。
レイアウトプランニングは、新オフィスが決まった後、移転の4ヶ月前には始めるのがいいでしょう。
6:新事務所の内装業者の選定・依頼
手順6は、新事務所の内装業者の選定と依頼をすることです。
内装業者を探す際は、内装業者それぞれ得意分野があることに注意しなければなりません。例えば、スピードを重視して工事する業者や、デザインを重視して評価を得ている業者など、それぞれに得意なことが異なります。自社の条件に合った業者を選定しきましょう。
内装業者への発注は、遅くとも移転の3ヶ月前には済ませるようにしましょう。
7:電話・LAN回線の工事業者の選定・依頼
手順7は、電話やLAN回線の工事業者の選定と依頼をすることです。
電話やLAN回線の工事業者は、内装工事の業者を探すと同時に選定を始めますが、ビルによっては指定業者がいる場合もあるので、先に確認しておきます。
電話やLAN回線工事の業者は、移転する3ヶ月前には選定・発注を行い、内装工事などほかの工事と被らないように、しっかりスケジューリングしましょう。
8:オフィス用備品の選定・発注
手順8は、オフィス用備品の選定と依頼をすることです。
オフィス用備品を選定する際は、レイアウトプランを確認しながら行うようにします。新規で購入するもの、既存のものなどサイズを確認しながらリストアップしましょう。また、同時に廃棄する備品もリストアップするといいでしょう。
オフィス用備品の選定・依頼は、レイアウトプランが決まり次第取りかかるようにしましょう。
9:引越し業者の選定・依頼
手順9は、引越し業者の選定と依頼をすることです。
引越し業者を選定する際はコスト重視で選んでしまいがちですが、コストだけではなく、内容もしっかりと確認して選ぶことが大切です。どのようなことをしてくれるのか、逆に何をしないのかを確認して選定しましょう。また、廃棄物の引き取りが可能かどうかも確認しておきます。
引越し業者の選定は、混みあうこともあるため、余裕を持って依頼しましょう。
10:リースする家具・OA機器の選定・発注
手順10は、リースする家具やOA機器の選定と発注を行うことです。
現事務所でリースしていた家具やOA機器などを、そのまま新事務所で継続して使うのか、新しいものに交換するのかなどを検討してリストアップしましょう。
移設する場合は、リース会社や販売会社に連絡するといいでしょう。
11:社内用移転マニュアルの作成
手順11は、社内用の移転マニュアルを作成することです。
事務所の移転計画や当日までのスケジュール、担当表などを社内の人すべてが把握できるようにマニュアルを作ります。マニュアルには作業内容や担当者以外にも、いつまでにどの作業を完了させておくのかも記入するといいでしょう。
移転計画については移転決定後すぐに、移転までのスケジュールなどは解約予告を行ったと同時に作成をしましょう。
12:現事務所の片づけ・ 引越し準備
手順12は現事務所の片づけと引越し準備をすることです。
移転先の事務所に持っていくものや廃棄するもの、置いておくものなどを、個人と部署ごとにリストを作ってチェックします。そのうえで、普段から使用頻度の低いものから梱包しましょう。一般的に1ヶ月前には梱包材が送られてくるので、それから進めましょう。
また、引越し当日の役割分担を確認するなど、引越しの1週間前には決めておきます。
13:当日の引越し作業
手順13は、当日の引越し作業です。引越しの前に決めた役割を確認して、当日の作業に臨みます。
引越し当日は、旧事務所・新事務所ともに立会いをする人を決めておきましょう。旧事務所で荷物の積み残しの有無、新事務所での搬入などトラブルが起きないように必ず立会いをするようにしましょう。
事務所の移転時に必要な公的手続き6つ
事務所の移転に必要なのは、引越しに伴う作業のみというわけではありません。公的機関などに住所変更など、移転に伴う変更手続きを行う必要があります。
では、どのような機関にどのような申請を行うのでしょうか。移転時に必要な公的手続き6つを見ていきましょう。
1:車庫証明(自動車保管場所証明書)
社用車やバイクなどを所持していて、移転に伴い駐車場も変更になる場合、車庫証明(自動車保管場所証明書)を警察署に届けなければなりません。
車庫証明は、駐車場の種類によって用意する書類が異なります。事前にどのような書類を準備すればいいのかをしっかりと確認しておきましょう。また、提出する警察署は、移転先を管轄する警察署になるので、同じ地域なのか違うのかも確認しましょう。
出典:保管場所証明の手続が必要な場合|埼玉県警察ホームページ
参照:https://www.police.pref.saitama.lg.jp/f0040/shinse/hokan02.html
2:法務局への住所変更の届け出
事務所を移転した場合、法務局へ住所変更に関する届け出を行わなければいけません。
本店や支店を移転し登記事項に変更が起きた場合、住所変更をした日から決まった期間内に本店・支店移転登記申請を提出します。また、本店を移転した場合と支店を移転した場合では、それぞれ提出期限が異なるので注意しましょう。
出典:商業・法人登記の申請方法について|法務局ホームページ
参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html
3:消防署への申請手続き
新しく事務所を新設する際には、防火対象物使用開始届出書と防火対象物工事等計画届出書を消防署へ提出する必要があります。
防火対象物工事等計画届出書は内装工事をする場合、防火対象物使用開始届出書は内装工事を行わなくても管轄の消防署に提出しなければなりません。
防火対象物使用開始届出書は使用を開始する7日前、防火対象物工事等計画届出書は工事を始める7日前と、期限があるので注意しましょう。
出典:新たにテナントを使用する皆様へ|東京消防庁ホームページ
参照:https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/tenants/index.html
4:労働基準監督署への住所変更の届出
労働基準監督署へも住所変更の届出をしなければなりません。
労働基準監督署へは、労働保険名称・所在地等変更届、雇用保険事業主事業所各種変更届などを提出します。それぞれに提出期限が設けられているので、事前に必要書類と期限を調べておくようにしましょう。
出典:事業所の所在地、名称、および事業主の住所、名称、氏名、事業の種類に変更
があったとき|厚生労働省pdf
参照:https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/var/rev0/0119/0661/3syou.pdf
5:税務署への申請手続き
移転のために納税地が変更になる場合、税務署へ異動事項に関する届出を提出しなければなりません。
異動事項に関する届出は、移転先を管轄する税務署ではなく、移転前の事務所を管轄する税務署へ提出します。提出期限は決まっていませんが、移転した後は早めに申請を行うようにしましょう。
出典:異動事項に関する届出|国税庁ホームページ
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_5.htm
6:健康保険・厚生年金保険の変更手続き
健康保険・厚生年金保険の変更手続きは、年金事務所で申請を行います。
健康保険・厚生年金保険の変更手続きは、移転する前の事務所管轄の年金事務所に健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地名称変更(訂正)届を提出します。移転先の事務所が管轄内か管轄外かで書類が違うため、事前に確認しておきましょう。
また、移転後5日以内に提出をしなければいけないため、忘れないよう注意しましょう。
出典:手続時期・場所及び提出方法|日本年金機構ホームページ
参照:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20141205.html
その他の事務所の移転時に必要な手続き3つ
事務所の移転で必要な手続きには、公的なものでなくともしておかなければならない届出もあります。これらをしないことで、業務に支障が出てしまう場合もあります。
では、公的な手続き以外に必要な手続きにはどのようなものがあるのでしょうか。その他の移転時に必要な手続き3つを見ていきます。
1:顧客・取引先への移転あいさつ
必要な手続き1つ目は、顧客や取引先への移転あいさつをすることです。
移転のあいさつには、ハガキや手紙、メールなどで移転のお知らせを行います。お知らせには、新住所やアクセス方法、新しい電話番号などを記載します。また、SNSなどを利用している企業は、SNSでの発信も忘れないようにしましょう。
移転のあいさつは、一般的に移転の1ヶ月前には発送するため、その前に準備をしましょう。
2:銀行口座・クレジットカードの住所変更
必要な手続き2つ目は、銀行口座やクレジットカードの住所変更を行うことです。
銀行口座や法人契約のクレジットカードを所持している場合、移転に伴い住所変更の手続きを行う必要があります。銀行口座の住所変更は窓口やオンラインで、クレジットカードはオンラインなどで変更手続きや書類の取り寄せを行えます。
どちらも必要書類などを事前に問い合わせておくといいでしょう。
3:郵便物届出変更届
必要な手続き3つ目は、郵便物届出変更届をすることです。
郵便物届出変更届は、新事務所が決まり次第速やかに郵便局に届出をします。届出をすることで、旧事務所宛の郵便物も新事務所に1年間郵送してくれます。
郵便物の中には、請求書など業務上必要なものもあるため、忘れずに届を提出するようにしましょう。
事務所の移転は計画的に進めよう
事務所の移転について見ていきました。
事務所移転を行うためには、しっかりと手順を確認してタスクを進める必要があります。いつ・誰が・どのようなタスクをこなすのかをリストにして共有することで、移転をスムーズに進めていくことができます。
また、移転作業以外にも、公的機関などに移転に伴う変更の届出をしなければなりません。
事務所移転をする際には、スケジュールやマニュアルを作成し計画的に進めていきましょう。